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煩悩ラプソディ

第17章 笑顔に紛れた大怪獣/OAN






「……ちゃん、大ちゃんてば、」


緩い振動とともに遠くから聞こえた声にうっすら目を開ける。


「やっと起きた」


ぼやける視界に映ったのは、蛍光灯の光を遮るように俺を上から覗き込んで笑う相葉ちゃん。


…あぁ、だいぶ寝てたな。


気怠いような体をゆっくり起こすと、さっき着てた服をちゃんと着てて。


…あれ?


寝てたソファを見れば、何事もなかったかのようないつもの様子。


立ち上がって歩いていく相葉ちゃんの後ろ姿も、さっき着てた服のまんまで。


え、もしかして…


「大ちゃん早く、もう撮影呼ばれるよ」


大きな鏡の前で髪を触りながら振り向いてそう言う。


えっウソ!今の夢!?
…いやめちゃくちゃリアルだったし!


くっそ、マジか…
なんかすっげえ損した気分。


ソファに寄りかかってぼーっと天井を眺めつつ、やけにはっきり思い出せるさっきの夢が頭の中で蘇ってくる。


…あ、やべ。


油断したら反応しそうなソコを無視するように、立ち上がって相葉ちゃんの横に並んだ。


「…ねえ、」

「ん?」

「…さっきのVさ、あれどう思う?」


相葉ちゃんが鏡越しにチラッとこっちを見て言う。


「…どうって?」

「や、あれはダメだよね…?」

「…」


今度は俺の方を向いて問いかける。


…うん、アレのことだろ。


「…大ちゃんさ、今日空いてる?」

「ん?」

「このあと用事ある?」


窺うように覗き込んだその目の奥に、いつもにはない強さを感じて。


俺の返事を待たずに相葉ちゃんが続ける。


「今日俺んち、にの来るから。
大ちゃんも…来る?」


含みを持たせるように投げかけられた言葉。


そりゃもちろん…


「…行く」


見つめ返してそう答えると、相葉ちゃんの口の端がきゅっと上がって小さく頷いた。



楽屋の扉がノックされ、撮影の始まりをスタッフが伝えに来て。


二人で廊下を歩きながら、相葉ちゃんが俺の耳元に手を添えて囁く。


"にののこと…どうするか考えといてね"


そう言ってニッと笑う相葉ちゃんに、俺も同じように微笑んだ。



相葉ちゃん、大丈夫だよ。
予行練習バッチリだからな。


いい子にして待ってろよ、にの。


…相葉ちゃんと、たっぷり可愛がってやっから。




end

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