煩悩ラプソディ
第21章 未知しるべ/AN
ピンでのレギュラー番組の収録を終え、共演者の皆さんに挨拶をし足早に局を出る。
車の後部座席でスマホを確認すると、にのからのLINEが三つ。
『今日いきまーす 15:36』
『明日休みだから泊まるわ 16:38』
『ねえ俺のアイス食った? 19:03』
仕事の合間に送ったと思われる立て続けに並んだ文字。
最後の吹き出しに書かれたそれを見て小さく「あ」と声を出してしまった。
先週にのが収録終わりでウチに来た時、スタッフさんからお土産で貰ったカップアイスを持ってきてて。
なんでも滅多に手に入らない限定モノで、一人一個しか数はなかったのに無理言って二つ貰ってきてくれたらしく。
俺にも食べさせたかった、って得意気に言うにのの顔が超可愛くてたまんなかったなー…ふふ。
…じゃなくて!
やばい…俺食べちゃってた?
あん時にの腹いっぱいで今度食べるって言ってたんだっけ?
え、なんで俺自分で食べたこと忘れちゃってんの?
画面を見ながらグルグル頭を巡らせても記憶は蘇ってこなくて。
『終わったから帰ってるよー^o^
アイスはごめん!俺食べたかも! 20:08』
身に覚えがなくてもとりあえずここは謝っとこう。
スラスラと指を動かして送信すると、画面にすぐ[既読]の文字が浮かんだ。
…え?見てたの?
しばらくすると新たな吹き出しが現れる。
『かもじゃなくて食べてんの。
アイス食いたい買ってきて 20:09』
文面だけじゃにのの顔までは分からないけど…
いや分かるか。
だってこれ、そろそろ帰ってくるかなってスマホ見てたってことでしょ?
俺のメッセージに嬉しそうに返事する顔、目に浮かぶもん。
もう、こうゆうとこがたまんないんだよな。
『にの~ごめんね?
すぐ帰るから待ってて! 20:11』
送信すると、またすぐに[既読]が浮かび。
そのあとは返ってこなかったけど、きっとゆるゆるのほっぺたでゲームの続きでもしてんだろうな。
「相葉さん、どこか寄りますか?」
「…あ、ごめんコンビニいい?」
言い終えてふと窓を見ると、ブルーライトの光に反射して映る俺の顔もしっかり弛んでいた。