煩悩ラプソディ
第23章 年上彼氏の攻略法/AN
店の前でゴミ拾いをしつつ、頭の中を駆け巡るのはにのちゃんのことばかり。
今朝になっても、俺のメッセージは既読になることはなく。
そればかりか、昼になっても、大学が終わってバイトに向かう時間になっても、全く状況は変わらないままで。
講義をサボって、学校に様子を見に行こうとも思った。
にのちゃんが無事に出勤してるのかどうかを。
でも、何の用もないのに、ましてやこんな真昼間に卒業生が来るなんてどう考えてもおかしいよなって考え直して。
いつ連絡があってもいいように片時もスマホを手離さなかったけど、もうすぐバイトも終わろうかという時間になってしまった。
…にのちゃん、大丈夫なのかな。
やっぱり、全部俺のせいだよね…。
俺だけが満足してて、ちゃんと気持ち届いてなかったんだよね…
こんなに好きなのに…
にのちゃん…どうか無事でいて。
それと、お願いだから…
お願いだから、もう会わないとか…言わないで。
考えれば考えるほど重くなっていく気持ち。
切り替えたくてふぅっと一つ息を吐き、清掃用の火鋏とちりとりを持って駐車場の方へ移動すると、ふいに前方から声を掛けられた。
「相葉!」
「…ぁ、え!大ちゃん!」
片手を挙げて笑顔でこちらに歩いてきたその顔に、言い知れない懐かしさが込み上げる。
「え、どうしたの?なんでここ知ってんの!?」
「いや、たまたま通りかかったんだよ。
したらお前がそこでぼーっとしてっから脅かしてやろうと思って」
「ははっ、なにそれー!感動の再会じゃないの!?」
「ばか、言うほど経ってねぇだろ」
そうやって笑いながら悪態をつくのは全然変わってなくて。
大ちゃんの言う通り卒業してそんなに日は経ってないはずなのに、なんだか凄く久し振りの様な気がする。
……あ!!
「っ、大ちゃん!今日にのちゃんって来てた!?」
「お、おぅ、来てたよ?」
「マジで!?あぁ~…良かったぁ、」
急にがっついた俺に多少驚きを見せた大ちゃんの返事を聞いて、途端に体の力が抜けるくらい安心した。
良かった…
とりあえず、にのちゃんは生きてる。
「…なぁお前らさ、なにがあったの?」
ぽつり口を開いた大ちゃんが、含みを持たせるように腕を組んでこちらを窺ってきた。