煩悩ラプソディ
第23章 年上彼氏の攻略法/AN
大ちゃんから聞かされたのは、にのちゃんは今日体調不良で早退したということ。
朝から顔色が悪く、目の下のクマも酷くて、ほとんど寝てないんじゃないかって。
そんな状態で放課後の教室で一人うずくまっていたのを、たまたま大ちゃんが見つけて介抱してあげたらしく。
朝の様子も含めて体調不良だけが理由じゃないと思った大ちゃんは、何度か聞いてみたらしい。
相葉と何かあったのか、って。
だけど『なにもない』の一点張りで、終いには『心配かけるから相葉くんには言わないでほしい』とまで言ったそうだ。
「…言わないでっつうか、相葉の連絡先知らねぇけど俺、って思ったけどな」
眉を下げて困ったように笑う大ちゃんに、何も言えず唇を噛み締めた。
…そんなに追い込んじゃってたの?俺。
倒れるくらい、苦しい思いさせてしまったんだ…
ほんと俺…
何やってんだよ…!
自分自身に対しての怒りや情けなさで、体の芯から震えてくる。
沸き上がって爆発しそうな想いをぐっと握った拳で堪えようとすると、そんな俺に気付いた大ちゃんがゆっくり口を開いた。
「…まぁ、何があったか知らねぇけどさ。
言いたいことは何でも言ったほうがいいと思うぞ、俺は」
俺の目を真っ直ぐ見たまま、穏やかな口調で続ける。
「あれだ、ちゃんと言わないと伝わんねぇってやつだ。
…まぁ、二宮先生にも言えるけどな」
そう言って目を伏せてふふっと笑うと、またこちらに視線を戻した。
「…伝え続けんだよ。今までもそうやってきたろ?
がむしゃらにぶつけろ。そうでもしねぇと無理だぞ、あの人は」
大ちゃんの優しくて強いその声が、荒んでしまいそうな心にすぅっと沁み渡っていく。
…そうだね、そうなんだ。
伝えなきゃ、届かないんだよ。
どんなに想ってたって、届いてなきゃ意味がない。
今までどれだけ想ってきたか。
どれだけの思いでその気持ちを伝えたか。
そこで終わりなんかじゃなくて。
…もっともっと、伝えなきゃ。
「…すぐ泣くのも相変わらずだな、お前」
「っ、うるさいな!花粉症だってば!」
目尻に溜まった涙をごしっと擦りながら、からかうように言う大ちゃんに反論する。
ほんと相変わらず…
大ちゃんに助けてもらってるなぁ、俺…