煩悩ラプソディ
第23章 年上彼氏の攻略法/AN
唯でさえ外でお茶することなんてないのに、こんなオシャレなカフェに連れてこられるなんて。
周りにはアフター5を満喫してるOLや、パソコンを叩きながらタブレットにも目を向けるビジネスマンやらが居て。
こんな地味なスーツ姿の俺なんて、どう考えても場違いなのに。
向かいで片肘をつきながらチョコレートパフェをつつく松本先生をじっと睨みつつ、居心地の悪さに背中が縮こまった。
…今日は、せっかく相葉くんとの時間が取れそうだったのに。
相談ってなんだろ…?
あ、てゆうか学校に戻んなくていいんだっけ…!?
「…松本先生、」
「はい?」
「あの、今日ってこのまま帰宅していいんでしたっけ…?」
「あぁ、ちゃんと学年主任に伝えてますよ。大丈夫です」
そう言って、チョコアイスに刺さったウエハースをパクッと食べる。
学年主任って…大野先生だよね。
え、大丈夫なのかな…
連絡体制に若干の不安を覚えつつ、未だ何も話そうとする気配のない松本先生を見やった。
「…二宮先生はさ、」
コーヒーカップを口元に運ぼうとした時、ぽつり呟く小さな声が届いて。
「…相葉と、どこまでいってます?」
「っ、…ごほっ!」
口をつけた瞬間そんなことを言われて、思いがけずコーヒーが気管に入ってしまった。
激しく咳込んで、苦しくて涙が出てくる。
…っ、えっ!?
どっ、どこまでって…!
尚も咳込む俺に『大丈夫です?』と、大して心配してないような声をかけてくる松本先生。
呼吸を整えてやっと落ち着きを取り戻すと、そんな俺を待っていたかのように、食べ終えたパフェの容器を端に置いてずいっと身を乗り出してきた。
「相葉と、どうなってます?今、」
さっきは聞き間違いかと一瞬思ったけど、そうじゃなかったようで。
改めて繰り返されたその質問に、一気に顔に熱が集まるのを自覚する。
「…そ、そんなこと、」
「そんなこと?」
「な、なんで、松本先生に言わないといけないんですか…?」
「え~だって…」
脳裏に、相葉くんの顔がふっと浮かぶ。
「だって…シたくなりません?」
組んだ腕をテーブルに乗せて、大きな瞳が俺を見据えてそう言った。