煩悩ラプソディ
第23章 年上彼氏の攻略法/AN
-『シたくなりません?』-
という松本先生の言葉が、脳内にリフレインして。
自分でも分かるくらい、目が泳いでいる。
今まで敢えて触れてこなかった部分。
これ以上は望めない、望んでもきっと叶うことはないと思ってたから。
傍に居られるだけで、温もりを感じられるだけで十分。
本当にそう思ってた。
だけど…
やっぱり…
そういうもの、なんだ…
《付き合う》って、そういうことなんだ…
ただ想い合ってるだけじゃ…
だめってことだよね…?
じゃあ、もしかしたら相葉くんも…
そう思ったら、急に物凄く恥ずかしくなってきて。
火照り出す頬を隠すように、ごしごしと両手で擦ってみる。
「いっつもイイとこまでいくんですけどねぇ…
いざとなると翔が恥ずかしがっちゃって、」
ふぅっと溜息を吐きながらさらっと口にする松本先生。
「…え?」
「ん?いやだから、脱がせるまではいいんですけど、」
「っ、先生っ…!」
いきなりの飛躍した内容に堪らず声を上げる。
一瞬、脳裏に松本先生と櫻井くんの画が浮かんでしまって。
ふるふるっと頭を振って脳内映像を必死に散らす。
「…あ、そうだ、二宮先生は抱きたいんですか?
それとも抱かれたいんですか?」
「…は?」
「ほら、どっちがどっち役かって話」
「……」
とどめの松本先生のその言葉に、今まで何とか動いていた頭の回路が完全にショートした。
「まぁ、聞かなくても分かりますけど」
対面でぶつぶつ言っている松本先生の言葉が、遠くに聞こえて。
「…さて、帰りますかぁ。あ、ここ俺が出します、付き合ってもらったんで」
伝票を持って立ち上がった気配に、止まっていた思考がゆっくり動き出す。
…どっちが、どっち?
「二宮先生?大丈夫です?」
顔の前で手の平を振られ、ようやくこちらを覗き込む松本先生の顔にピントが合った。
「あー…すみません。先生にはちょっと刺激が強すぎました?」
そう言って苦笑いをすると、ポケットからスマホを取り出して。
「…あ、翔だ。じゃ、俺ここで。
また明日」
きれいな笑顔を残し伝票を手に出口へ向かう後ろ姿を、ただぼんやり見つめるしかできずに。
どっちが、どっちって…
…え!?