煩悩ラプソディ
第4章 もうキスなんてしない/ON
今日のは…ちょっとヤバイかも。
収録が終わって楽屋に戻る途中、前を歩く大野さんをジッと見つめる。
いくら仕事とはいえ…
ちょっとやりすぎたか。
だって…潤くんが"お返しは?"とか言うからさ…。
あの流れじゃやるしかないじゃない。
隣を歩く相葉さんがボソッと話しかける。
「…ねぇ、さっきのやつ大丈夫?」
「…なにが」
「や、ラップキス」
「大丈夫ってなにが?」
言わんとしてることは分かるけど、あえて何でもないフリを装う。
…だって、しかたないじゃん。
楽屋に入ると、先に入っていた大野さんが入口のコーヒーメーカーの前に居た。
俺をチラ見して、なにも言わずにコーヒーを手にソファの方へ歩いていった。
いつもなら俺の分も一緒に淹れてくれるのに。
…やっぱり、怒ってんな。
しかもいつもと違う場所に座ってる。
あぁ…俺と距離を置きたいわけね。
対面に座る翔さんと話しながらヘラヘラ笑っている大野さんを見てると、なんだか腹が立ってきた。
…俺だって別にやりたかったわけじゃないよ。
仕事だよ、あんなの。
あぁ…なんかもう、イライラしてきたっ…!
明日はオフだから、今日は大野さんと飯行ってそのまま泊まらせてもらう予定だった。
昨日そんな話したばっかなのに。
もういい…
大野さんのバカっ!
無言で帰り支度を始めた俺を相葉さんが遠慮がちに見遣る。
大野さんと交互に見ながら、心配そうな顔をしてるのが目の端に映った。