煩悩ラプソディ
第23章 年上彼氏の攻略法/AN
「…ねぇほんとに大丈夫?」
首筋にあった手が移ってするりと頬を包み込み、くいっと上を向かされじっと見つめられる。
…っ、やばいっ…
どくんと体の芯が疼いて、一気に全身に熱が駆け巡るようで。
こんな状況が続けば本当に熱が出てしまいそう。
俺の頬を包む相葉くんの両手に、震えながら自分の手を重ねてやっとの思いで絞り出した。
「だ…だいじょぶ、」
「え、ほんと?だって顔真っ赤だよ?
ほら、汗もかいてるし、」
そう言って右手で前髪を梳いて、おでこに滲む汗をなぞられる。
そんな仕草にまたぎゅっと目を瞑ると、一呼吸置いて相葉くんが小さく呟いた。
「…にのちゃん、何かヘン。
どうしたの?なんかあった?
…俺に隠し事してない?」
「…っ、」
そっと目を開けた瞬間探るような瞳に射抜かれて、思わずまた目を伏せる。
だけどまたくいっと顔を上げられて、大きな手でがっちり頬を包まれているせいか全く顔を動かせない。
「…言ったよね?何でも言い合おうって。
じゃなきゃ伝わんないって。
ねぇ、俺…なんかした?
もう俺さ…にのちゃんのこと泣かせたくないんだよ、」
眉根を寄せ静かに語りかける瞳に捉われて、ごくっと息を呑み込んで押し黙ってしまった。
確かに…何でも言い合おうって約束した。
お互い素直に、正直に、伝え合おうって。
でも…
とてもじゃないけど…
こんなこと、言えないっ…!
部屋に流れる沈黙と見据えられる眼差しに圧され、高鳴る鼓動と火照りで息が詰まりそう。
「…俺にも、言えないことなの?」
ぽつり発したその瞳が翳って物憂げな表情になり、慌ててまた相葉くんの手に両手を重ねて口を開いた。
「っ、違うから…!あの、ごめん…
今は…言えない、」
重ねた手をぎゅっと握りながらそう言うと、相葉くんは増々眉根を寄せて困ったようにはぁと息を吐いた。
そして、包まれた頬を急にぐっと寄せられ、口がとんがった状態になって。
「ぅ…」
「…言えるようになるまで、待つからね」
念を押すようにじっと覗き込まれれば、素直にこくんと頷くことしかできなかった。
…言えるように、
なるのかな、これ…。