煩悩ラプソディ
第23章 年上彼氏の攻略法/AN
「雅紀から…最近の先生が変だって相談受けて。
自分に隠してることがあるんじゃないかって、」
躊躇いがちに話し出した言葉を聞いて、最近の自分を振り返ってみる。
確かに…相葉くんを前にするとどうしても"あのこと"が頭を過ぎって、変に意識し過ぎてたから。
いつかちゃんと言うって約束したけど、そのいつかを迎える準備はまだ出来てなくて。
「アイツああ見えて結構悩むタイプっつうか…
すぐ思いこむとこもあるし…」
頭をポリ、と掻きながら遠慮がちに目を向けられる。
「もし雅紀が勝手に勘違いしてるんだったら…
言ってやってくれませんか…?」
『変なこと言ってすみません』と申し訳なさそうに目を逸らした櫻井くんは、あの頃のままの友達想いな優しい顔をしていた。
櫻井くんにまで心配をかけてしまってたんだと思うと、途端に遣り切れなさを感じて。
俺また、相葉くんに変な気を遣わせてしまってたんだ…
俺がちゃんと言わないから…
でも…こんなこと言っていいの?
もし伝えたとして…
嫌われたりしたら、どうしたらいいの?
再び上を見上げた櫻井くんの横顔をぼんやり見つめて、湧き出てくる考えが頭の中をぐるぐると駆け巡る。
相葉くんに嫌われたら、俺…
「わっ!」
「ぅわっ…!」
いきなり背後から両肩を叩かれ、思わず飛び上がって声を上げた。
振り返ると、いたずらっぽい笑みを向ける松本先生と後ろでニコニコする相葉くんが。
「ちょ、何してんだよ!ガキじゃあるまいしっ、」
「ふふっ、いいじゃん。びっくりしたでしょ?」
恐らく俺と同じように驚いたであろう櫻井くんが、松本先生に噛み付く。
「くふふ、大丈夫?にのちゃん」
余程ジェットコースターが楽しかったのか、ニコニコ顔の相葉くんが近付いてきて俺の顔を覗き込んだ。
驚きで一瞬忘れそうになったけど、相葉くんの顔を見るとさっきの櫻井くんの言葉が浮かんできて。
こんなに優しい友達を持った相葉くんに、もうこれ以上俺のことで心配かけちゃいけない。
どう思われるかなんて分かんないけど…
でも、このままじゃきっとダメだから。
ちゃんと…
相葉くんに、言わなきゃ。
そう小さく心の中で呟いて、変わらず笑顔を向けてくれる相葉くんにそっと決意をした。