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煩悩ラプソディ

第4章 もうキスなんてしない/ON






「…なにその顔」

「え?あぁ…いや、うん、分かってるよ」

「は?」

「や、仕事だって分かってるよ?」

「ウソ。怒ってたじゃん、さっき」

「…怒ってた?俺?」

「怒ってたよ…
目も合わせてくんないし、座るとこ違うし…」

「ぇ…ぁ、あぁ!」


分かった!と言わんばかりの声で、そのあとふにゃっと笑った。


「や…お前の顔がヤバくて…
キス待ってる顔がさ」

「…は?」

「モニターで観てたけどさ…
ちょっとヤバかったよアレは。
かわいすぎ、アレ」


…なんなの?
なに言ってんのこの人!


「や、だからさ…にのの顔ちゃんと見れなくてさ…
見たら俺…ガマンできなくなりそうで」


そう言って俺を真っ直ぐ見つめた。


「…あんな顔、他のやつに見せたくない」


眉を下げて少し困ったような顔で笑って俺の前まで歩いてきた。


「今度あんな顔したら…おしおきね?」


小さい声で呟くと、斜めに被ってた俺のキャップの鍔を下にグイッと下げて視界を遮断した。


そしてすぐに、顔を傾けてチュっと触れるだけのキスをしてきて。


「なんっ…」

「やっぱ顔見たらダメだ」


ヘラッと笑って俺の左手を取って歩き出した。


…ちょっと、見られたらどうすんのよ、もう。
けど…大野さんがヤキモチやいてるなんて。


なんか…すっごい嬉しんだけど。


「…するわけないじゃん」

「ん?」

「…アンタ以外とキスする訳ないじゃん」

「…ふふっ、なに急に」

「アンタこそ俺以外のヤツに気ぃ許した顔したらおしおきだからね」

「えっ、マジ!?」

「マジだよバーカ」


大野さんのお尻を膝でポスッと蹴ると"あいてっ"っと間抜けな声を出したから思わず笑ってしまった。


…てか、俺どんな顔してたんだろ。
これは放送チェックだな、うん。
そんでその顔を武器にしてやる。


大野さんにしか見せない、秘密兵器にしてやるんだから。




end

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