煩悩ラプソディ
第5章 愛情注ぐ理由はいらない/ON
ピンポーン……
と、チャイムが軽快な音を鳴らした。
いつものようにそれに見向きもせず、テレビ画面に意識を集中させる。
確か、宅配便が来るのはあさってのはず。
ピンポーン…
少しの間のあと、再びチャイムが鳴った。
なんかのセールスかな。
まぁそれならそれで。
だいたい2回は鳴るから、たぶんこれが最後だろう。
あぐらの中心に置いた手元を忙しなく動かしつつ、膝が痛くなってきたななんてぼんやり思っていると、側に置いていたスマホが細かく震えだした。
メールかな…
あ、電話か…
画面からは目を離さずにずっと振動を続けるそれを右手で拾い、画面に映された文字をチラッと見て思わず二度見した。
…え、大野さん!?
慌てて画面をスワイプする。
「はいはい、どした?」
『あ、出た。…いまどこ?』
「え、家に居ますけど、」
『え、居んの?じゃ、出てよ』
「え?」
『開けてよ』
…え?今のって大野さんなの!?
リビングのドアを見遣って、かろうじて左手だけで操作してたリモコンのセーブボタンを押す。
「ちょ、いま出るから待って…ぁいってっ、」
いきなり立ち上がったせいか、普段よく鳴る膝が一段と大きな音を立てて鳴った。
『ん?にのどした?』
「や、大丈夫…はい、ごめん今開けたから、」
膝をさすりつつドアモニターの解錠ボタンを押す。
痛みに顔が歪むけど、今はそんなことどうでもいい。