煩悩ラプソディ
第5章 愛情注ぐ理由はいらない/ON
…ちょっとちょっともう!
なんで急に来んのよっ…!
心の準備ってもんがあんでしょーよ…。
ついこのあいだ、俺たちはいわゆる…
"両想い"
だってことが判った。
けど、それが判ってからというもの、なんか妙に照れくさくてうまく振舞えていなかった。
"恋人"っていうフレーズもたまらなく恥ずかしくて。
…いや、そもそも俺たちは、
"恋人同士"
なのかもちゃんと確認していない。
お互いに、肝心なことは言わないとしてるような気がして。
俺は自分でも自覚するほどの天邪鬼だから、なかなか自分からその話題に触れることもできなくて。
たまに、あの日のトイレの中でのことを思い出して…
ヘンな気分になることだってある。
そう…
昨日の夜も、俺は大野さんを想って…
ピンポーン……
突然鳴ったチャイムに我に返った。
…やべっ!
顔赤くなってる、俺っ…!
リビングのドアを開けて、火照る顔を冷まそうと両手で頰をペタペタ触りながら廊下を歩く。
歩きながらハッとした。
…俺、こんなカッコだけど大丈夫?
ヨレヨレのスウェットと、これまた年季の入ったお気に入りのパーカー。
一歩も外に出ないと決めた日の、定番のスタイル。
着替えようかどうしようかと廊下をウロウロしていると、2度目のチャイムが軽く響いた。
…あ〜もういいやっ!
急に来るあっちが悪いんだもん。