煩悩ラプソディ
第27章 青春にはまだ早い/OM
遠くで軽いチャイムの音が校舎に反響する。
視界には雲一つない青空が広がり、そよそよと爽やかな春風が吹いて。
絶好のサボリ日和。
この時間は誰も居ない裏庭の木陰の下、ごろんと芝生に転がりイヤホンをつけて空を眺めた。
この高校に入学してからというもの、俺の居場所はこの裏庭だけ。
元々高校なんて行きたくもなかったのに、親から強制的にここに入れられた。
親の脛齧ってる金持ちの坊ちゃんだらけのこんなとこになんか、絶対行きたくなかった。
親が敷いたレールの上を、ただ単調にひた走るだけの毎日なんて吐き気がする。
なんで俺は、金持ちの家に生まれてしまったんだろう。
金さえあれば自由な暮らしができるって、誰がそんなこと言ったんだよ。
俺に自由なんか一つもない。
家も学校も、俺の居場所なんかどこにもないんだ。
こんだけ授業もサボってりゃ、そろそろ親も俺のこと諦めねぇかな。
それか、いっそのこと何か問題でも起こして退学にでもなってしまおうか。
そんな考えが脳裏を掠めるけど、実際そんなことできるとは思ってない。
ここから抜け出したいと思ってる反面、何も行動できてない自分にも大概嫌気がさしてんだ。
耳に流れてくる小気味の良いメロディのボリュームを下げ。
もうひと眠りするか、とあくびを一つ溢して目を閉じた。
***
体に温かい何かを感じて、意識が引き戻される。
頬に芝生の当たる感触がして、寝返りをうっていたんだと気付いた。
…ん?
そう、何かの温もりを背中に感じるんだよ。
つーかこれ学ラン…?
俺の体に掛けられていたのは、指定の学ランで。
慌てて起き上がると、視界に入った光景に目を丸くした。
こちらに背を向けて、自分の腕枕で眠っている男。
シャツ越しに分かる華奢な肩を竦めて、縮こまってすやすやと寝息を立てている。
…こいつ誰っ!?
手に握ったこの学ランは恐らくこいつのもので、さっき背中に当たっていた温もりもこいつの背中だろう。
何で知らないヤツが隣で昼寝してんだよ!
女の子ならまだしも、男に添い寝されてたなんて…!
一気に嫌悪感が込み上げて、未だ呑気に眠るそいつを睨みつけていると。
「…ふぇっくしっ!」