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煩悩ラプソディ

第27章 青春にはまだ早い/OM






思わずごくっと喉が鳴る。



いやいやおかしいだろ!


幾ら綺麗な顔してるからってこいつは男だぞ!?


男相手に俺は何を…



一人で勝手に焦っていると、ふいに大野が小さく呻きながら寝返りをうった。


ごろん、と向けられた体は余りに近くて、急に目の前に現れたその顔に心臓が飛び出そうになって。


暫く息を止めてみたけど保たなくて、鼻からふぅーっと空気を吐く。



この胸の高鳴りはなんなんだ…?


俺は大野に、嫌われなきゃいけねぇんだろ?


そんな奴にときめいてどうすんだよ!



そう思いつつ、胸の鼓動と今にも動き出しそうな衝動をなんとか抑えようとぐっと拳を握る。


その時。


「…ん、」


うっすら目を開けた大野と目が合い、驚いて飛び退こうとすると。


…っ!?


体を芝生に抑えつけられ、大野が俺の腹に跨ってきて。


表情を変えずに見下ろされたまま、何が起こったのか分からずただ大野を見上げていた。


「…お前また来たんだ」

「あ…その、ここはっ…別に誰のものでもねぇだろ!」

「…そんなにここに居たいの?」

「っ、あぁ!居たいよ!悪いかよっ!」

「ふぅん…」


完全に圧されてる体勢なのに、口だけは負けじと睨みながら噛み付く。


これで嫌われれば…



「…じゃあ別にいいけど」

「…えっ?」

「でも条件がある」

「は?いや…」

「お前今日から俺のパシリね」

「…はぁ!?」


突然告げられた言葉に、頭が追い付かない。


「で、名前は?」

「…ま、松本潤」

「なら松潤だな。あ、お前一年だろ?
俺三年だから。お前じゃなくて大野さん、な?」


見下ろしながらそう言われ、こくんと頷くしかなく。


「…うん、よろしい」


そんな俺に初めて向けられた大野さんの笑顔が。


ふにゃりと笑う、その笑顔に…


俺は、完全に堕ちてしまったみたいだ。




「まつじゅ~ん、行くぞぉ」

「あっ、はい!今行きます!」


教室の後ろのドアから呼ばれ、クラスメートに別れを告げる。


少し前を行く猫背に追い付いて隣に並ぶと、小銭を手渡され。


「俺コンポタな」


ふにゃりと笑いかけられ、小銭を握り締めた手が熱くなった。




俺の居場所、やっと見つけた。



…いつもの裏庭と、この人の隣。





end

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