煩悩ラプソディ
第30章 超完璧溺愛主義/SM
退屈だった講義が終わり、一斉に動き出す周りの学生たち。
俺はというと、そんな周囲から取り残されるようにその場から動けずにいた。
頬杖をつき、机に置いたスマホに目を落とす。
そこには、いくつもの新着メッセージの通知が並んでいて。
送り主はただ一人。
「…はぁ」
腕を倒してそのままずるっと机になだれ込むと、放置したままのスマホを恨めしく見つめた。
…最近、松潤からの束縛が激しすぎる。
前から薄々感じてはいたけど、まさかここまでとは正直思ってなかった。
俺が大学生になって自分の目が届かなくなったことで、俺の行動に対する制約がかなり増えたんだ。
サークルの女の子とは口を聞くなだの、男友達は一度紹介しろだの、教授から呼び出されても一人では行くなだの。
なんだよそれ!
俺は男だぞ!?
しかももうガキじゃねーんだ!
終いには『バイトはするな。そこで恋が生まれる可能性がある』とか言われて。
遊ぶ金どうすんだよって噛み付いたら、俺が養ってやるとか言ってたけど。
なんなんだよマジで!
俺のことなんだと思ってんだって!
つーか…
こんな関係、ほんとに恋人なんて言えんのかよ。
俺のこと…
そんなに信用ねぇのかよっ…!
悔しくて思わず込み上げてきそうになり、ぐっと拳を握って堪える。
俺は…
松潤のこと、ちゃんと信じてんのに。
…なんで分かってくんねーんだよ。
ギリッと奥歯を噛み締めた時、傍らのスマホがぶるっと震えた。
また松潤か…と少し憂鬱になりつつ手に取れば、そこには違う名前が。
『翔ちゃーん!元気?(^^)
今からなんか予定ある?
もしなかったらちょっと付き合ってほしいんだけど!』
雅紀からのメッセージ。
そのいつもと変わらない文面に、自然とモヤモヤが晴れていくようで。
すぐに返信をして、心なしか軽くなった体で待ち合わせ場所へと向かった。