煩悩ラプソディ
第30章 超完璧溺愛主義/SM
雅紀に無理矢理連れられてきた学校で、無駄にキョロキョロしてる俺。
あの後どんよりした顔の俺を見かねて、二宮先生に会いに行くついでに松潤にも会いに行こうと誘われ。
高校に来たのなんて卒業以来で、まだ一年も経ってないのにやけに懐かしく感じる。
慣れた足取りで職員室へ向かう雅紀の後ろについて行くと、前から見知った顔が歩いてきた。
「あ、大ちゃん!」
「なんだお前また…お、櫻井?」
気怠そうに口を開いたものの、後ろの俺に気付くと驚いた顔に変わる。
「よっ、久し振り」
「おわ、櫻井なんか変わったなお前!」
目を丸くして俺を見る元担任。
そういえば会うのは卒業以来か。
「ふふ、翔ちゃんイケメンでしょ?」
「すげー茶髪じゃねぇか。お、耳に穴開いてんぞ」
「ちょ、触んな!」
興味あり気に耳や髪に伸ばしてくる大野の手を払いつつ、こんな他愛もないやり取りがどこか心地良くて。
「で?なんだ?二人揃って」
「ん、ちょっとね。ねぇ松潤どこ?」
「さぁな、職員室か資料庫じゃねぇのか?」
そう言われ、職員室の小窓を覗いた雅紀がこちらに振り返って首を振る。
「資料庫だね。じゃ、いってらっしゃい!」
「はっ?ちょ、お前は?」
「俺はにのちゃんに会いに来たんだもん。
今日は図書室に居るってさっきメール来た」
緩んだ顔を隠さない雅紀に、肩をポンと叩かれて。
「ちゃんと話すんだよ?じゃ、がんばって!」
満面の笑みで再度俺の肩をポンッと叩くと、図書室へと続く階段を勢い良く駆け上がっていった。
完全に雅紀のペースに巻き込まれた挙句、心の準備も何もないまま放置って。
「…なんか知んねぇけど、お前も大変だな」
雅紀の後姿を見送ってこちらに振り返った大野に、また肩をポンと叩かれた。
『じゃ、がんばれよ』と何も知らないくせに背中を押され、職員室の前に一人取り残されて。
もう、なんっなんだよ!
どいつもこいつも勝手すぎんだよっ!
すれ違う生徒から不審な眼差しを向けられているのにふと気付き、握っていた拳を隠しながらしぶしぶ資料庫へと足を踏み出した。