煩悩ラプソディ
第31章 未だに勢力まだ拡大中/AON
キッチンで簡単なつまみを準備してあいつらが来るのを待っていた。
そろそろかな、という頃合いでリビングのローテーブルに置いていたスマホから軽い通知音が響く。
急いで駆け寄って手に取ると。
《お酒とか足りる?買ってこようか?》
というにのからのLINE。
相葉ちゃんの運転の横で打ったであろうメッセージに、すぐさま指を滑らせる。
《いっぱいあるから大丈夫
早く来いよー》
あ、やべ。
つい気持ちが先走って、いつもはちゃんと入れる絵文字を入れ忘れちまった。
酒とかいいからもう早く来いって。
《はいよ。もうすぐ着く》
すぐに画面に現れた吹き出しを見届けて、思わずにやける頬を摩った。
ー遡ること、一週間前。
晩酌しながら何気なくスマホをいじっていた夜のこと。
次の休みに久し振りに釣りでも行きてぇな、なんてふと頭を過ぎったもんだから、その日のシケ具合を調べようとネット検索のアイコンをタップした。
画面をスクロールしながらどんどん検索の網を潜っていき。
目的の海の情報まで辿りついたところで、視界の端に入ってきたその文字に何となく目が留って。
"嵐"
そういえば、今まで"嵐"について調べたことなんかなかったな。
元々携帯とかネットとか疎いし別に気にもしてなかったけど。
俺ら5人でグループLINEを始めてからは、スマホを触る回数も増えたってもんだから。
こうゆうのなんつーんだっけか…エゴ…
ま、いいや。
ちょっと調べてみっか。
その時の俺は、特に深い考えもなく興味本位のつもりで"嵐"という文字を追っていった。
…でもそれが、まさかこんな未知の扉を開くことになるなんて。