煩悩ラプソディ
第31章 未だに勢力まだ拡大中/AON
翌週の収録日。
いつもと何ら変わらない楽屋だけど、俺の意識は違うところにあった。
スマホの画面を指でなぞりつつちらちらと目を遣る先には。
「はい相葉さん、今週のやつ」
「お、さんきゅ」
にのから相葉ちゃんに手渡されたマンガ雑誌。
それを嬉しそうに受け取ると、予め折られてたページを開いてすぐに読み始めて。
そんな相葉ちゃんをこっそり盗み見て、満足そうにまたゲームをやり始めるにの。
こんな些細なやり取りに、つい過剰に反応しちまうんだ。
俺はもう完全に…
"にのあいBL"にハマってしまったらしい。
手元の画面の中では、そんなあいつらが日々色んなことを繰り広げてる。
この世界のあいつらと現実のあいつら。
それを比べて、俺しか知らない本当の姿をこうして見れんのが…
なんつーか…優越感。
ニヤける頬をあくびで誤魔化そうと口を開けた時、画面の上部にLINEの通知が現れた。
見ると、にのからで。
にの《あやしいよ、おじさん。》
どきっとして対面のソファに座るにのを見れば、ちらっと目を上げてまた画面に指を滑らせる。
続いて現れた吹き出しに思わず心臓が止まりそうになった。
にの《どうだった?ほんとの俺ら》
笑いを堪えるように目線だけを上げて俺を見るにの。
…マジか。
やっぱバレてたかっ…!
俺の焦り顔に口を手で覆って笑いを堪えるにのに、負けじと画面に指を滑らせて。
大野智《お前声でけーよ!起きるに決まってんだろ!》
にの《寝てねーじゃん。起きてたくせに》
大野智《寝ようとしたらおまえら》
にの《嘘です。一人でしましたね?》
大野智《待て俺の番。お前らがやりだすからおれ》
あいば《なんの話?》
シュッと急に出てきた吹き出しはなぜか相葉ちゃんで。
にのと少し離れて座る相葉ちゃんが、スマホを握りきょとん顔で俺とにのを交互に見てる。
俺とにのだけのやり取りと思ってたら、どうやら三人のトークルームだったらしく。
くはっと笑いながら立ち上がったにのは完全に確信犯。
相葉ちゃんは訳が分からないといった顔で俺を見てて。
あっちゃあ~…
どう説明すんだ、これ。
あぁもう…
夢なら早く醒めてくれっ!
end