煩悩ラプソディ
第32章 あいつがライバル/AN
にの、それって…
一体どうゆうこと?
どう受け止めたらいいの?
また意味のないセリフ?
俺すぐ勘違いしちゃうんだけど。
勘違いして…いいの?
今…
言っても、いい?
流れる前髪の間から見つめてくる瞳に完全に目を奪われてしまって。
揺れて潤んだそれが、やがて意識を手離すようにゆっくりと閉じられていくから。
「にのっ…」
思わず名前を呼べば、またゆっくりと瞼が開いて視線が合わさる。
ずりずりと動いて距離を縮める間も、にのはぼんやりと俺を見つめたままで。
「にの、俺ね…
お前のことさ…」
どくどくと鼓膜に響く音と、震えそうな唇。
だけど、そんな緊張を和らげるかのように優しい眼差しを向けてくれるにの。
それは、優太に向けていたものと同じで。
その瞳に吸い寄せられるように、優太の上から手を伸ばしてそっと頬に触れた。
火照ったそこをゆっくりと撫でると気持ち良さそうに目を閉じるから。
にの、俺…
「ずっと…昔っからさ…
好きなんだよね…にののこと…」
途切れ途切れだけど、確かに伝えた言葉。
ずっとずっと言えなかった、一番言いたかった言葉。
そんな俺の告白に、にのは目を瞑ったまま全くの無反応で。
え…
まさか寝た…?
ぴくりともしない様子に焦って撫でていた頬に手を当てたまま親指で唇に触れてみると。
ふわりと口角が上がり、んふふと笑いながらゆっくりと開けられた瞳。
その赤く潤んで揺れた瞳と視線が重なる。
「…何言ってんの今更」
「ぇ…」
「…知ってるよそんなの、ずっと…」
言いながら、俺の手にそっと重ねられた丸っこい手。
「…ずっと一緒に居るんだから。
分かるよ、そんくらい…」
酔いと眠さでいつにも増してまったりした口調のまま、潤んだ瞳がゆっくりと瞬いて真っ直ぐに見つめられた。