煩悩ラプソディ
第32章 あいつがライバル/AN
寝そべったままのにのの向かいに回り込み、同じように優太の傍に寝転んでみる。
にのは一瞬驚いた顔をしたけど、また小さく微笑んで優太のお腹を撫でていて。
すぅすぅと寝息を立てる優太の安らかな寝顔。
小さく開いた口も、くったりと閉じられた瞼も、サラサラな髪も。
見れば見るほど小さい頃の俺そのもの。
顔の横に無防備に置かれた小さな手をそっと撫でれば、心地悪そうに振り払われて。
今度はもちもちの頬を摩ると、う~んと眉間に皺を寄せて身動ぎ。
「…やめなさいよ」
「くふふ」
そんな優太が可笑しくて愛おしくて、笑いながらにのに否されても鼻をつついたりして。
今日は、散々こいつに対抗心を燃やし続けてはすこぶる空振ってた気がするな。
だけどまぁ…なんだかんだで楽しかったから。
優太が居なきゃ間違いなく俺は今ここには居ないし、にのとの距離感も今までと何ら変わらなかったはず。
今こうしてにのと優太と同じ時間を過ごせてるなんてこと、俺にとっては奇跡に近いんだ。
こんな小さなライバル相手に一喜一憂して。
それでもやっぱり、諦めきれなくて。
この想いを伝えたい、伝えなきゃって思わせてくれたのは他でもない優太だから。
優太のおかげで俺は…
にのへの気持ちを再確認できたんだ。
右手でサラッと前髪を梳くと、むにむにと口を動かして気持ち良さそうに寝息を立てる。
そんな優太を見ているとこっちまで睡魔が襲ってきそうで。
床暖の温かさも手伝って意識がぼんやりしてきた時。
ふいに向かいのにのの小さな声が耳に届いた。
「なんかさぁ…自分でもバカじゃないって思うんだけどさ…」
アルコールのせいか床暖のせいか、火照ったように赤いにのの頬。
そしてにのも眠気がきているのか、とろんとした瞳は水分を多く蓄えて俺を見つめていて。
「なんかこうしてるとさ…俺と相葉さんの子どもみたいだよね…」
『酔ってんのかな俺…』って恥ずかしそうに微笑みながら、優太のお腹に置いていた手を自分の腕枕に重ねた。
突然のにののセリフに動揺を隠せない。
どくどくと速まる鼓動が、腕枕で塞いだ耳の奥に響き渡る。