テキストサイズ

煩悩ラプソディ

第32章 あいつがライバル/AN

*2017.4.16ピックアップお礼*
『あいつがライバル』にのside



相葉さんにやっと俺の想いが届いた日。


嬉しくて嬉しくて。


酔っぱらって頭ふわふわだったけど、全部鮮明に覚えてる。


頬に触れた手も、震えてた唇も、掠れた声も。


綺麗な丸い瞳が段々と潤んでいくのも、そこから涙が零れていくのも。


そして…
抱き締められた腕の力強さと、確かめるように触れ合った優しい唇と。


その全部が、忘れられない感覚として刻まれた。


こうして隣り合って眠ることすら、ぎこちなさが残る今日この頃。


でもただ、この人の息遣いや体温を傍で感じられるだけでどれだけ俺が満たされてるか。


…ねぇ、分かってる?


「…にの」


暗闇の中、すぐ隣から聞こえた声。


仰向けた二つの体は肩だけがぴったりくっついて。


「神様ってさ…ほんとにいるんだね」


真夜中のこの人のこうゆう発言には、もうだいぶ慣れてきたもので。


「…なによ急に」

「ん、だってさ…願い事ほんとに叶ったから」

「…なんの?」


静かな部屋に息付く互いの小さな声。


ふいにふわっと空気が動いたかと思えば、感じてた体温が急に近くなり。


「…ね、こっち向いて」


体ごとこちらを向いた相葉さんにゆっくりと腕を引き寄せられ、向かい合った。


至近距離にある瞳が、暗闇の中でもその穏やかな表情を伝えてくる。


「ほらあの時さ…お願いしたじゃん、優太と三人で」

「…うん」

「俺はさ…にのに俺の想いが届きますように、って言ったの」


声色で分かる相葉さんの表情。
きっと今、すごく笑ってる。


「神様がさ、俺の願い事叶えてくれたんだよね…」

「…そうかな」

「え?」


間抜けな声を出した相葉さんに、思わずんふふって笑って。


「それはさ…相葉さんが言わなかったからだよ、願い事」

「…え?」

「人に言ったら叶わないんだから」


だから俺もほんとのことは言わなかったんだよ。


「…くふ、そっか」


鼻先で笑う相葉さんの吐息がくすぐったい。


「じゃあさ…にのは何て言ったの?」

「言ったら叶わねぇじゃん」

「えー気になんじゃん!」


…なんて。
いいよ、言おうか?



"相葉さんの願いが叶いますように"



…ほらね、もう叶ってるでしょ?



end

ストーリーメニュー

TOPTOPへ