煩悩ラプソディ
第5章 愛情注ぐ理由はいらない/ON
チューブを手に取り人差し指に多めに垂らす。
「…準備、しよっか」
潤んだ瞳で見下ろされて、足を少し開かれ股の間に大野さんが座った。
ついに、くる。
言い知れない恐怖と期待とで、一気に心臓がバクバクしだした。
すると、蕾に冷たいヌルッとした感触がして思わず肩を揺らす。
そのまま周りをなぞられて、ヌルヌルしたジェルとともにつぷっと指が入ってきた。
「うぁっ…!」
なんとも言えない圧迫感と違和感。
そして痛み。
思わず目を見開いて声を出してしまった。
「あっ、ごめん!大丈夫…?」
すぐに指を抜いて、心配そうな声色で大野さんが問いかけてくる。
「…ん、ごめ、大丈夫…
ゆっくり…お願い、」
ほんとは全然大丈夫じゃないけど、これは俺が乗り越えなきゃいけないから。
先に進めないんだから。
ふぅっと息を吐いて、こくり頷いて大野さんに笑いかけた。
それに応えるように、目で頷いて再びジェルをつけて指を蕾にあてがう。
ジェルで多少潤滑されているものの今まで一度もそこに何かが入ってきたことはないから、受け入れるのは容易いことじゃない。
次第に進んでいく指の感触。
押し出そうとする体と、受け入れたいという心。
その入り交じる痛みと恐怖に、瞑っていた目尻に涙が滲んできた。
「あぅ…んっ…はぁっ…」
ようやく指が3本入った頃には、涙がとめどなく頬を伝っていた。
「にの…ほら、入った」
ずっと俺を気にかけながら解してくれていた大野さんが、優しい目でそう言った。
俺は返事をすることも出来ずに、ただ呼吸を整えるのに精一杯で。
「もう…挿れてもいい…?」
切なげな顔を向けて、片方の手で器用にジェルの蓋を開ける。
「にののその顔見てたら…
なんか、たまんなくなっちゃって…」
ジェルを自身にユルユルとつけながら、切羽詰まった声でそう言う。