煩悩ラプソディ
第35章 二人三脚/SM
連日テレビから流れる『猛暑』のフレーズ。
散々聞き飽きたその言葉の背景で、もうすぐ訪れる区切りの日を密かにカウントしてる自分が居て。
こうして毎年、絶え間なくアルバムリリースやコンサートが出来るなんて本当にありがたいこと。
加えてメンバーそれぞれに個人の活動が舞い込み、目まぐるしくも充実した日々を送れている中。
その日だけは、駆け抜けてきた毎日からちょっとだけ解放されたい気分になる。
普段はそんなにわがままを言う方じゃないけど。
って、俺が思ってるだけかもしんないけど。
でもこの日だけは…
どうしても大切な人と過ごしたいんだ。
レギュラー番組の収録前、いつものように定位置で新聞を広げる翔くんを盗み見る。
スマホを手に取りササッと指を動かせば、少し離れたその場所から軽い通知音。
でも傍らのスマホには目もくれず、相変わらず視線は新聞に落とされたままで。
続けてもう一度送信したらようやくその存在に気付いたみたいで、画面を見た翔くんの目が俺の方に向いた。
若干驚いた瞳は『なに?』って言ってるけど、それには答えずに手中のスマホを振って翔くんを見つめる。
《ねぇもう決めた?どこ行く?》
《おーい翔さんや》
翔《ごめんまだ決めてなかったわ。つーか休みだっけ?》
楽屋内でこんなやり取りをするのは日常で、それもこれも一応他のメンバーを気遣ってのことなんだけど。
メンバー全員が無言でスマホとにらめっこしてる時間がけっこうあったりして、冷静に見たらなんか笑えるよなって。
しかも多分…いや絶対、にのと相葉くんは二人でこっそりやり取りしてる。
あ、ほら。
ソファに沈んでるにのなんか画面見ながら萌え袖で口元押さえちゃってんじゃん。
バレバレなんだよ。
もっと上手くやり過ごせよな、俺らみたいにさ。
《やっぱりね、だろうと思った。休みだよ俺は。翔くん収録でしょ?》
翔《そう、夕方まで。いやマジごめん。どうする?今年何したい?》
《あのさ、凄いこと言っていい?》
翔《出た。お前それ言う時ほんとに無理めなヤツ言ってくんだろ》