煩悩ラプソディ
第35章 二人三脚/SM
いや別に凄いことでもないか。
てか俺今までそんな無理なこと言ってきたっけ?
《大丈夫と思うけど。ねぇ言っていい?》
翔《お前の大丈夫はほとんど大丈夫じゃないヤツなんだよなー。まさか盆栽?それは香川さんに言えって》
《違うから。海。海行きたい》
翔《海?え、どした?全然フツーじゃん》
《だから大丈夫だって言ってんじゃん。何が盆栽だっての》
そう返せばスマホを見ながらふふっと笑う横顔。
そんな翔くんにいち早く反応したにのが、俺の方を見てニヤッと笑いやがった。
お前らだってダダ漏れてんだろうが!って睨み返しても、素知らぬ振りでまたスマホに視線を落とされ。
《ちょっと顔。緩んでるから》
翔《おっとこれは失礼。海かぁ~いいな。それだけでいいの?》
《うんいいよ。海行きたいなって思ってたから》
翔《了解。最高の誕生日にしてやるから首洗って待ってろよ》
《なんで俺殺されんの(笑)》
翔《あとケツも洗っとけ》
《バカじゃないの?》
文字通りそんなバカなやり取りをしつつ、迎えるその日に胸を躍らせてる自分が居るのも確かで。
いいんだ、これで。
てゆうかむしろ普通のことをしたい。
一年に一度の区切りの日に、好きな場所で好きな人とただ一緒に居られたら。
こんなに幸せなことなんてないよ。
本番を知らせる合図に一斉に立ち上がる面々。
翔くんの後について楽屋を出るのも自然と習慣になって。
さっきのバカみたいなやり取りなんて、みんなと居る時はおくびにも出さないけど。
今日の翔くんの背中からはご機嫌なオーラがぷんぷん漂ってる気がする。
それには後ろの相葉くんやにのも何となく気付いたようで。
「なんか今日の翔ちゃん肩上がってない?」
「あ、ほんとだ」
俺だけに聞こえるように呟きながら笑い合う二人。
「そう?別に普通でしょ」
「そうかなぁ~なんかいいことあったんじゃない?
ねぇ?」
「ねぇ?」
相変わらず楽しそうに笑う二人の奥で、マイペースにあくびをかまして歩くリーダー。
そんないつもの光景も相まってなんだか凄くいい気分。
「あれ?松潤もなんかいいことあった?」
「え?べつに?」
少し前を歩く背中を見遣って、抑えきれない笑みが声になって漏れた。