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煩悩ラプソディ

第36章 愛のしるし/AN





でもこういう些細なことが、俺にとってはどうしようもなく嬉しかったりするんだ。


先輩と両想いになれて感じた、大切にされてるって実感。


バスケの時はあんなにカッコ良くてキャプテンとしてチームを引っ張ってんのに。


俺と二人になった時の先輩はなんていうか…子どもっぽいとこもあったりしてさ。


…そんなとこも大好きだけど。


ぼんやり先輩とのLINE画面を眺めていると、遠くの廊下からバタバタと走ってくる足音が聞こえて。


一瞬で先輩だと気付いた矢先、ガラッと勢い良く開けられたドア。


「松潤!にの居る!?」


いつもの声量が保健室に響き渡ると自然と笑みが溢れてくる。


起き上がりそっとカーテンの隙間から顔を覗かせれば、俺を見つけるなり一直線に飛んできた。


「にのっ!熱は?大丈夫?」

「ん…平気」


すぐにカーテンの内側に滑り込んできた先輩に頰を包まれ、見上げながらそう答えれば。


ぎしっとベッドに片脚を乗せてぎゅっと抱き締められ。


「も〜…心配させんなって…」

「うん…ごめん…」


さわさわと頭を撫でられながら、こうして先輩にぎゅってされるとまた体が熱くなってくるのが分かる。


未だに慣れない愛情表現に、いつだって俺のハートはビリビリに痺れてんだ。


「あれ?やっぱ熱くない?ちゃんと計った?」

「計ったけど…今上がったの」

「え?なんで?」

「…先輩のせいでしょ」


体を離して顔を覗き込んでくる瞳に、わざと拗ねたように口を尖らせてそう言えば。


「…くふ、そんな可愛い顔していいの?」

「なに…んっ!」


ニッと口角を上げたかと思えば、尖らせていた俺の唇にちゅっと先輩のが触れて。


「ちょっ、ここっ…」

「いいじゃん松潤居ないし。はいはい帰ろうね〜にのちゃ〜ん」


はぐらかすように頭を撫でられたから、俺だって反撃。


「ね、せんぱい」

「ん?…っ!」


振り返った先輩の腕をぐいっと引き寄せ、その悪い唇目掛けて短いキスをお見舞いしてやった。


真っ赤になって口を覆う先輩。



ほら、こういう子どもっぽいとこも。


過保護なくらい俺のこと大事にしてくれるとこも。


いつもぎゅって抱き締めてくれるあったかい温もりも何もかも。


もうぜんぶぜんぶ。




…大好きだよ、先輩。






end

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