煩悩ラプソディ
第6章 三行の魔法/SO
月曜日。
ニュース番組の生放送が終わり、軽いミーティングのあと楽屋へ戻る。
テレビをつけて、スーツを脱ぎながらメールチェック。
…あ、きてる。
『翔くん、今日もお疲れ様。
寒いから気をつけて帰ってね。
ではまた明日』
放送が終わるとたまに、智くんからこんな労いのメッセージがくる。
最近はLINEで送ってくるようになって、これもたまにだけど、本文と関係ないスタンプが多用されたりしててちょっと笑ってしまう。
生放送で張り詰めていた緊張感も、このメッセージのおかげでようやく解れるような気がする。
見てくれている、という安心感。
ある意味良いプレッシャーにもなるそれは、智くんらしく短い中にも優しさがこもっていて。
『ありがとう。
智くんもあったかくして寝てください。
じゃあおやすみ』
こちらも短く送信すると、画面にすぐ【既読】の文字が浮かんだ。
俺のメッセージが既読になるのは、だいたいいつも次の日の昼頃なのに。
そう思っていると、画面に新たな吹き出しが現れた。
『翔くん。
ちゃんとご飯食べてね。
気をつけて帰ってね。』
その文字のあとに、目をハートにしたうさぎが
”I LOVE YOU”と言っているスタンプがついていた。
思わず吹き出す。
今日はどうしたんだろう?
でも、なんか妙に嬉しくなってしまって。
何も考えずにそのまま通話をタップした。
『…ぇ、え?』
「ぁ、智くん?ごめん起きてる?」
『え、これ電話できんの?』
「あぁそこなのね。できるんだよこれ」
恐る恐るといった感じで通話を始めた智くんに苦笑しつつ、素直に思ったことを伝える。
「メッセージありがとね。
つか、どうしたの今日は。
こんな時間まで」
『え?あぁ、や…
なんか翔くん疲れてない?大丈夫?』
…え?
『目の下ちょっとクマあったし、なんかいつもの顔じゃなかったから』
普段と変わらない、のんびりした声が電話の向こうから聞こえる。
…そんなに見てくれてたの?
「…そう?俺ヒドイ顔してた?」
『や、カッコよかったよ。
けどなんか違ったんだよね』
サラッとそんなことを言う智くんに、なんだか気恥ずかしくなってしまう。