煩悩ラプソディ
第37章 刻みだした愛の秒針/AN
その瞬間は何も考えられなくて。
ギリギリまで保ってた筈の羞恥心は、迫り上がってくる熱を吐き出したいという欲望にあっさり負けてしまい。
うわ、俺…
相葉さんの手で…
イっちゃったよ…
改めてしっかり認識した途端に恥ずかしさが込み上げてくる。
しかもあり得ないくらい早かったし。
だってしょうがないでしょうよ。
こんなの…
相葉さんにこんなことされたら…もうどうしようもないじゃん。
預けた肩から上げることのできない顔。
この人もこの人で一向に動く気配がない。
…なに?
なんなの?
もしかしてすげー早かったことに引いてる?
それか変な声出ちゃったことに引いて…
「あっ…!」
急に俺のを包んでいた指が動いて新たな刺激が訪れた。
「んっ、やめっ…」
「にの…」
俺の出した白濁を纏った指先でやわやわと揉みしだいてくる手。
頑なに顔を上げないでいると頬でコツコツと頭をノックしてきて。
手を動かしながら何度も呼び掛けられるから渋々顔を上げれば。
目の前にはにっこり微笑むだらしない顔。
「…ちょー可愛かった、にの」
「っ…」
「声も良かったよ」
「っ、バッカ…んっ、」
言い返そうとした唇はまた塞がれ、鼻先や頬にそれぞれちゅっと落とされたあと漸く離れていった。
さっきからこういうキスにいちいち胸がきゅんとしてしまう。
俺ってやっぱり自分で思ってた以上に受け身気質なんだろうか。
なんてそんなことを考えながら目の前の喉仏に視線を落としていると、急にもぞっと起き上がった相葉さん。
ベッドサイドのティッシュボックスから二、三枚抜き取ってごしごしと手の平を拭う後ろ姿。
ふと目線を横に遣れば、当たり前の様に鎮座しているローションが目に入って。
っ…!
いや…分かってはいたけど。
もう十分に覚悟はしたつもりだけど。
これからが本当に未知の領域。
これから、相葉さんと…
ついに相葉さんと…繋がるんだ。
その時、見つめていた先のボトルがふいに相葉さんの手に取られ。
振り向いたやけに雄々しい瞳にどくんと心臓が飛び跳ねた。