煩悩ラプソディ
第37章 刻みだした愛の秒針/AN
手中のボトルを握ってにのの元へ戻ると、上掛けに肩まで包ってジッと俺を見ていて。
さっきドアの前に立っていた時と同じ顔で、緊張しているのは明らか。
…にの、大丈夫だから。
「う〜寒っ!」
素っ裸の体をいそいそと上掛けの中へ潜り込ませ、小さな肩をぎゅうっと引き寄せる。
合わさった胸板からは少し早い心音がトクトクと伝わってきて。
何にも言わなくても分かってるから。
怖いだろうけど絶対大丈夫だから。
「…にの」
「……ん」
「大丈夫だからね」
「……ん」
後頭部をトントンと撫でつけながら伝えれば、肩口からくぐもった短い返事が届いた。
その短い声色でもしっかりと伝わる俺への安心感。
そっと体を離し、肩を押して仰向けにさせ。
見上げてくるゆらゆらと揺れる瞳に"大丈夫"と目で合図をして。
「じゃあこうして…」
「えっ、こんな格好?」
膝を押し曲げて開いた途端、焦ったような声で首を持ち上げたにの。
「うん。じゃないと見えないし」
「みっ…」
「最初だけ確認させて」
俺だってこんな経験初めてなんだ。
知識として入れていたのは情報までで、実践は今日が最初だから。
余裕ぶってかっこつけてにのを傷付けたりなんかしたら大変だし。
ローションの蓋をパチンと開けて十分に指に纏わせ。
『マジかよ…』ってぶつぶつ言うにのもおずおずと膝を曲げてくれている。
でも余程恥ずかしいのか、両膝をつけた内股で前を両手で覆ってるのがなんか可愛くて。
思わずふふっと笑みを溢すと『じっくり見てんじゃないよ』って突っ込まれたけど。
さすがに『今から見る』なんて言えないから笑いながら『ごめん』って謝っといた。
こんなやり取りで少し和らいだようなにのの表情。
それを確認してこっそり安堵の息を吐く。
…ここからは俺も気合いを入れないと。
「いくよ、にの」
「……ぅん」
小さく届いた返事のあと、初めて触れるそこに滑ついた指をそっと宛がった。
ぴくっと微かに跳ねた体。
そのまま周りをなぞるように動かせば、きゅうっと入口が窄まったのが見てとれて。
そこをノックするつもりでぐっと人差し指に力を込めると、つむじの先で声にならない声が聞こえた。