煩悩ラプソディ
第7章 微笑がえし/MO
「…よし、できた」
ふぅと一息つくとじわじわと達成感がこみ上げる。
昨日の夜、スマホ片手に頬杖をついて考えていた。
前に番組で誕生日プレゼントを手作りする企画があって、リーダーが俺に帽子をプレゼントしてくれたことがあって。
すごくカッコ良くて色合いも好きで、かなり気に入ったからよく使ってる。
そしてもうすぐ、リーダーの誕生日。
今年は俺も何か手作りでプレゼントしてみたくなって。
いや、リーダーみたいに器用じゃないのは分かってる。
だけどこういうのって気持ちじゃん?
そりゃ手料理振る舞うとかなら胸張ってやるけど、ここはあえて得意分野じゃないもので勝負したい。
あの人に、喜んでもらいたい。
そう思って選んだのが、アートクレイシルバーというシルバーアクセサリー。
思い立ったが吉日。
すぐに道具一式が入っているキットとやらを買ってきて製作に取りかかった。
説明書とにらめっこしながら手順通りに進めていき。
かなり時間はかかったし、ちょっと不恰好ながらもようやくシルバーリングのペンダントが出来上がって、今に至る。
…やればできんじゃん、俺。
ふふっと笑みがこぼれ、顔の前で揺らしたリングの向こう側にリーダーの笑顔を思い浮かべた。
***
翌日。
収録前の楽屋で、俺は自覚するほどソワソワしていた。
手作りのものを人にあげる気持ちって、恥ずかしいようななんとも言い難い緊張感がある。
いつ渡そうか。
タイミングが分からない。
すでにリーダーをはじめ他のメンバーも揃ってて、いつも通りそれぞれの過ごし方をしている。
すると、ソファに座ってたリーダーが立ち上がってこちらに歩いてきた。
「…ぁ、リーダー」
思わず声をかけてしまった。
やべ…なんて言おう。
「ん?なに?」
気の抜けた顔で近寄ってきたその首元に、いつもはない光るものを見つけた。
え、これってまさか…
首元をジッと見つめていると、視線に気づいたリーダーが「あぁ、」と言って続ける。
「これね、姉ちゃんがくれたの。
なんか分かんないけどどっかのブランドだって」
言いながらシャツに隠れていたチェーンの先を出すとシルバーに光るリング状のペンダントが現れた。