煩悩ラプソディ
第8章 隣にある優しさ/AO
のどかな田園風景に広がる銀世界。
太陽の陽が射し、田んぼの畦畔に積もった雪が溶けだしてキラキラしてる。
沁み入るようなひんやりした空気もなんだか気持ちいい。
簡易テントから出て、んーっと伸びをした。
今日は久しぶりのメンバーとのロケ。
いつもはだいたい一人か、芸人さんか、動物かで。
だからメンバーとのロケってなんか嬉しくて。
…しかも、リーダーとだし。
「ねぇリーダー、ちょっと散歩しない?」
テントの中でストーブの前に陣取って座り、カップの熱いお茶にふうっと息を吹きかけているリーダーに声をかける。
「え〜さみぃもん。雪降ってんでしょ?」
「ん〜ちらほら。けど景色キレイだよ?
ちょっと行こうよ」
ズズっとお茶をすするリーダーに近づいて「ね?」と笑いかけると、口を尖らせて目をしばしばさせながらもゆっくり立ち上がってくれた。
スタッフさんに声をかけてから二人並んで歩き出す。
ニット帽とネックウォーマー。
それにダウンジャケットと手袋。
完全防備だけど、やっぱり顔は防寒できないから寒い。
隣を見ると、スンと鼻をすすりながら白い息を立ち昇らせる横顔があって。
鼻先に雪が舞い落ちてきて冷たさに顔をしかめていた。
「…んふふ、」
「んぁ?どした?」
「んん、なんでもない」
俺は、リーダーのこんな些細な仕草が好きで。
なんかホッとするっていうか癒されるんだ。
隣を盗み見て頬を緩ませていると、速度を出した軽トラが後ろから近づいてきてすぐ横をビュンと走り去っていった。
「おわっ!」
民家と田んぼ沿いのあまり広くない道路。
歩道という歩道はなくて危うく右腕を持ってかれるとこだった。
…うわぁ、ビックリした。
小さくなる軽トラをぼんやり見つめていると、リーダーに左腕をグイッと引っ張られて。
「相葉ちゃんこっち歩きなよ」
そう言って車道側に移動して歩き出した。