煩悩ラプソディ
第41章 積み重なる真夏のsuccess/SM
まさか。
まさかこんな…
超絶俺好みの相手に出会えるなんて。
「どうも、松本です」
言いながら軽く会釈してきたその顔に釘付けになる。
長い睫毛を数回瞬かせ、宝石みたいに潤んだ大きな瞳。
形の良い艶のある唇の下にはセクシーなほくろ。
発せられた少し鼻にかかった声も、質感の良さそうな色白の肌も。
そのすべてが俺の理想のカタマリ。
やっと、やっと出会えました…
神様…
俺を見捨てないでくれてありがとうございますっ…!
***
一度神様に見放されたと思ったのは数日前。
退屈な講義が終わり一斉に動き出す周りに倣って教室を出ようとした時のこと。
数列前に見覚えのある二人の後ろ姿を確認して。
ガヤガヤとした周囲の喧騒に紛れるように肩を寄せ合ってなにやら親密なムード。
鼻先で笑い合う様子は只ならぬ雰囲気を醸し出している。
おいおい…
まさか嘘だろっ…
「おいニノ!」
呼びながらすぐさま駆け寄れば、振り向いたその顔が明らかにマズイと言うように歪む。
その隣で眉を顰めてこちらを窺うのは、この間の合コンで知り合ったイケメンくんだった。
「おいニノっ!おま、お前っ…」
「翔ちゃんごめん!あのね、えっとー…」
「なに?にのに何の用?」
奥で立ち上がったニノを守るようにずいっと立ちはだかったイケメンくん…もとい、相葉くんにジッと見つめられ。
思わずグッと息を飲む。
至近距離だと更に整った顔が際立ち、その強い眼差しに気圧されてしまう。
…じゃなくて!
「ちょ、ニノ!どういうことだよ!話が違うじゃねぇか!」
前に立つ相葉くんに隠れるように身を潜めるニノ。
マジでどういうこと!?
俺を置いてけぼりにするつもりかっ!?
「ニノ!なんとか言えよ!」
「ちょっと!いきなり来て何言ってんの?やめろよ、にの怖がってんじゃん」
背後からチラッと覗かせた瞳は一度俺を見てすぐに相葉くんを見上げる。
そんなニノの頭を優しく撫でる男らしい手。
その光景は完全に出来あがったカップルそのもので。
この夏。
俺にはこの夏に懸ける想いがあった。
今年こそは…
絶対にパートナーを作ってやるんだと。