煩悩ラプソディ
第42章 おめでとうとありがとう/O
《にのちゃん先生と相葉くん》シリーズより
物理教師 大ちゃん先生
***
いつもと変わらない昼休み。
いつも通りコンビニ弁当をつついていると隣から呟きが聞こえた。
「もしかしてもうすぐ誕生日じゃないです?」
卓上カレンダーに向けた視線をこちらに寄越す松本先生。
「え、そうなんですか?」
すかさず反対からひょこっと顔を覗かせる二宮先生。
「いやそうだけど…俺言った?」
「翔が言ってたんで。今月大野先生誕生日だって」
カツ丼をもぐもぐするその目は細まって俺を見つめる。
なんだよ、またノロけやがって。
「え…相葉くんそんなこと言ってくれなかった…」
ぽつり溢した声に振り向けば、片やしゅんとした顔でおにぎりをじっと見つめてて。
こっちもこっちで目も当てらんねぇな…
「で、誰にお祝いしてもらうんです?」
「ん?」
「誕生日。誰かに祝ってもらうんでしょ?」
「誰かって誰だよ」
「またまたぁ!」
ニヤニヤした顔でつついてくるけどそれカツ丼の箸だろ、おい。
つーか誰かってなん…
「えっ!もしかしてっ…」
いきなり声を上げたのは二宮先生。
そのまま机上の写真と俺とを交互に見遣って窺ってくる。
…は?
「んなわけねぇだろ!もう何年も会ってな…」
「え?え?何の話?誰のこと?」
「もういいって!おい、先生が余計なこと言うから!」
「でもっ…」
しつこい尋問をかわしつつ弁当でサッと机を隠すと。
…なんだよ、そんな目で見んなよ。
何か言いたげに見つめてくる薄茶色の瞳。
「せんせ…」
「じゃあ二人で祝ってくれよ、俺の誕生日」
「え?」
座ったままキィと少し下がって二人を見遣る。
なんだよ、いいじゃねぇかそんくらい。
「ついでに櫻井と相葉も呼んでいいぞ」
「何ですその上から目線」
「…やりましょうよ!櫻井くんも相葉くんも一緒に!」
冷めた眼差しの松本先生と対照的に、うんうんと頷きながら瞳を輝かせる二宮先生は。
"相葉くんと準備しなきゃ"って嬉しそうにおにぎりを頬張る。
そう、いいんだよ俺は。
いつまで経っても教え子は可愛いもんだし。
あんたらのノロケだってもう聞き慣れた。
だから寂しかねぇよ。
俺はこれが心地いんだ。
「え〜翔空いてるかなぁ」
「聞け、今すぐに」
「あ、私も聞いてみます!」
この場所がいいんだ、俺は。
end