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煩悩ラプソディ

第42章 おめでとうとありがとう/O


《アイドルにのとファン相葉くん》シリーズより
謎のヤンキーボーカリスト 大野智

***


今の事務所はなかなか面白い。

俺が言うのもアレだけどみんな変わってんだ。

まぁ俺にとっちゃその方が居心地はいんだけどな。

最近よくつるむようになったこのメンツ。

特に前に座るコイツらはこっちが恥ずかしくなるくらいのイチャつきっぷりで。

「かず、これ食べる?ちょー美味しいこれ」
「うん食べるー。取ってまーくん」

俺らみたいな若僧でも一応個室にしてはもらったけど。

まるで遠慮なんかしてねぇなコイツら。
ま、いいけど。

横に座る松潤は、そんなヤツらを呆れ顔で眺めつつ手元でスマホをイジイジ。

あれか、櫻井さんか。
コイツもコイツで仕事とプライベートごっちゃになってっからな。

仕事中は櫻井さんにガッツリ説教されたりしてるし。
その後ちゃんとフォローされてんだろうけど、色々。

含み笑いつつビールを煽れば、対面から痛い程の視線を感じて。

「…大ちゃんさ」
「あん?」
「いつデビューするの?」
「ぶっ!」

悪気のないそのピュアな瞳に口元を拭いながらビールを置いた。

「ちょっとまーくん!直球すぎ!」
「え?だってそろそろじゃ…」
「相葉くん、それはダメでしょ」

いやそんな慌ててフォローされると逆にしんどいぞ。

「んなの俺が聞きてぇよ。聞くな、俺に」
「え、じゃあ誰に聞いたらいいの?」
「…やっぱ翔さんじゃない?」

一斉に松潤に向く視線。
分かりやすくスマホをサッと隠す仕草にすかさず反応した二人。

「潤くん今すぐ翔さんに電話して!」
「は?何でだよ!」
「大ちゃんの未来がかかってんだってば!」

おい今度はわちゃわちゃしだしたぞ。
ほんと面白ぇなコイツら。

笑いを堪えつつジョッキを取ろうとしたら、あぐらの下のスマホがぶるっと震えて。

お、噂をすれば。

「はい」
『大野!決まったぞ!』
「…え?」
『デビューだ!CD出すぞ!』
「えっ…!」

マジか…

そのままスマホを松潤へ渡してグビっとビールを煽った。

やっと…やっとか…

不覚にも目頭が熱くなった矢先、一斉に湧き上がった歓喜の声と共に揉みくちゃにされ。

「大ちゃんおめでとー!あれ?泣いてる?」
「泣いてねぇ!うるせんだよお前ら!」

なんてな、嘘だよ。

…みんなありがとな。



end

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