煩悩ラプソディ
第9章 まだ見ぬ未来と、大切なアナタへ/ON
華やかで夢のようなひと時は本当にあっという間で。
ドームツアーの最中、今日のステージでは誕生日を迎えた大野さんへのサプライズコーナーもあった。
会場のお客さんと俺たちがひとつになって、みんなで歌ってお祝いして。
その中心で幸せそうに満面の笑顔を見せる大野さんを見て、俺も本当に幸せな気分だった。
…そう、それはさっきまでの話。
俺の斜め前に座るその人は、幸せそうにだらしない顔をみんなに向けていた。
ツアーの合間のちょっとした食事会。
大野さんの誕生日ということもあり、俺たちだけじゃなく制作スタッフも含めて宴会をしている。
いや、いいんだよ?
誕生日なんだし。
けどさ、アンタどんな顔してるか分かってる?
無自覚にもほどがあるんだって。
曲がりなりにも、俺たちは恋人同士なのに。
「智くん智くん!はい、あ〜ん?」
「あはは!なんでも食べんじゃん!」
「大ちゃ〜ん、はいあ〜ん!」
大野さんはかなりアルコールが回ってきてて、ふにゃふにゃしてる。
そんな大野さんをみんなが面白がって、さっきから人形のように口を開けるのに合わせて次々に料理を放り込んでいく。
なんなの、その顔…。
もう見てらんないんだけど。
「…にの?どした?」
ノってこない俺に気づいた向かいの翔さんが顔を覗き込むように窺う。
「…んん、別に。
ちょっと飲みすぎちゃったかも」
ビールジョッキを軽く振って、へへっと笑う。
別にさ、みんなが楽しんでんのを盛り下げる気なんて毛頭ないんだよ。
ただ…なんだろ、なんか腹立つ。
「あれぇ?にのちゃん酔っちゃった?
相葉くんが介抱してあげよっかあ?」
隣の相葉さんが急に距離を詰めてきて、ヘラヘラ笑いながら肩に手をかけてきた。