煩悩ラプソディ
第9章 まだ見ぬ未来と、大切なアナタへ/ON
「あ〜も〜はいはい、わかったから。
アンタ相当飲んでんね」
「ええ〜?だって誕生日だよ?大ちゃんのさぁ」
「そうだよにの、お前も祝ってやれよ」
大野さんの隣に座る潤くんが据わった目でふっかけてくる。
祝うったって…
俺はほんとは…
大野さんと二人で…
グイグイくる相葉さんの肩を押そうと右肩を引いて体勢を変えた時、ほぼ全体重をかけてきていた相葉さんがそのままなだれ込んできた。
後ろに相葉さんごと倒れ込んで、テーブルで膝を思いっきりぶつける。
弾みでビールジョッキが溢れ、ガチャンという音とともに掘りごたつの床にビールが散乱した。
「あ〜あ〜!」
一同が騒ついて、笑い声やカチャカチャと片付ける音が聞こえてくる。
「…いったいよ、あいばか!」
「…へへ、ごめんね?」
鼻先でヘラッと笑われ、膝の痛みと足に滴るビールの冷たい感触も手伝いますます腹立たしくなってくる。
なんだよこれ!
も、最悪っ…
相葉さんの胸をグイッと押して起き上がると、忙しなく動く人たちの中に大野さんの姿がなかった。
「…あれ?大野さんは?」
「ん?あ、どっか行った?トイレとか?」
せかせか片付ける潤くんがチラッとだけ見てまた片付けに意識を戻す。
「…俺も、トイレ」
なんとなく大野さんのことが気になって、よろけながらトイレへと向かった。
迷路のような通路の奥。
ようやく探し出したトイレの入り口を目指して歩くと、ちょうどそこから出てきた大野さんを見つけた。
向こうもこちらに気づいて立ち止まる。
微妙な距離。
なんだ、この感じ。
勝手に俺が腹立ってるだけだから、きっとあの人はなんとも思ってない。
いいや、普通にしとけば。
ゆっくり歩み寄って声をかけた。