煩悩ラプソディ
第9章 まだ見ぬ未来と、大切なアナタへ/ON
「…えっと、俺たちは、」
「あーーー!ストップ!も、いいっ!」
慌てて大野さんの口を塞いで制する。
ちょっとこの人…どういうつもりっ!?
「お〜い言っちゃえよ〜!バレてんだぞぉ〜!」
「そ〜だそ〜だぁ!」
やいやい囃し立てる相葉さんや潤くん。
翔ちゃんも眉を下げて爆笑してる。
大野さんがモガモガしだして我にかえり、急に恥ずかしさで頭が爆発しそうになる。
「ちょっと!なんなのこれ!」
小声で大野さんに詰め寄る。
すると、ふにゃっとしたいつもの笑顔で返された。
「…誕生日、ちゃんと二人で過ごしたいから」
優しく見つめられて、なにも言い返せなかった。
…なんだよ。
アナタもそう思ってたんじゃん…。
俺だけの気持ちじゃないって分かった途端、胸がじんわりと綻んだ。
「あの〜、いいとこでごめんなさいだけど。
もうタクシー来てるってよ」
翔さんが口元に手を添えて呼びかけると、大野さんがペコッと頭を下げて俺を連れて部屋を出て行く。
相葉さんが「あとで差し入れもってくから」と言ったあと「あいてっ」と遠くで聞こえたのを最後に、俺たちは店を出た。
タクシーに乗り込み宿泊先に向かう。
前方の据付け時計に目を遣ると、23時35分。
車窓から流れる景色に視線を移し、まだ煌びやかな明るさを従える街並みをぼんやり眺める。
さっきまでの喧騒から一転して、静かで穏やかな空気が車内を包み込む。
ふいに隣の大野さんが、シートに投げ出していた俺の手をそっと握った。
驚いて隣を見れば赤くした横顔で前を向いていて。
なんかおかしくてじっと見ていると、チラッと目線が送られて目が合ってふふっと笑いあった。
俺たちはまだ、始まったばかりで。
想い合う気持ちが強くなればなるほど、
乗り越えなきゃいけないことは、増えてくる。
だから…
こうして確かめるんだ。
残りの誕生日の時間は、
俺だけのもの。
初めての気持ちで過ごす、
特別な日。
「…智」
誕生日、おめでとう。
これからもずっと、
アナタの中に、俺を映して。
そして…
同じ未来を、歩こう。
end