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煩悩ラプソディ

第9章 まだ見ぬ未来と、大切なアナタへ/ON






「…だいぶ飲んでるけど平気?」

「にの、さっきのなに?」


間髪入れずにハッキリと言われ、ワケが分からないという顔になる。


「なに相葉ちゃんとハグしてんの」


俺を見つめる視線はさっきまでのふにゃふにゃしたものじゃなくて、眉を寄せた真っすぐな眼差しだった。


ハグって…
さっきのアレ?


「あれは相葉さんが、」

「くっついてたじゃん、体」


くい気味に言われてカチンときた。


「…アンタだってなによ、あんな顔して」

「あんな顔?」

「自覚ないでしょ?なにあのだらしない顔」


キッと睨みつけながら言い終えて口を尖らす。
ダメだ、すぐこんな顔になる。


黙り込んでいる大野さんと俺の距離は、単なる空間としてだけではないような気がする。


何も言わない大野さんにイラついてきて、俺も無言で振り返ってその場をあとにしようとした。


するとすぐに後ろから大野さんの足音が聞こえたかと思うと、急に俺の手を取ってグングン先に引っ張って歩いていく。


「えっ、なに…」


俺の方を振り向きもせず、迷路みたいな通路を抜けて俺たちが宴会をしている個室に着いた。


なに?
なんなの…!?


「ちょっ、おおのさ」


言い終わる前に扉が勢い良くバンっと開かれた。


一瞬にしてみんなの視線が集まる。


ふいに大野さんからグイッと引っ張られて、二人並んで扉の入り口に立った。


「…あの、今日は誕生日祝ってもらってありがとうございました。
ちょっと…先に帰りますんで、あの、コイツも」


大野さんがそう言うとみんなが驚いた顔で俺の方を見る。



…いや、一番びっくりしてんの俺なんだけど!



「…智く〜ん、まだ言うことあるんじゃない?」


翔ちゃんがニヤニヤしながら俺たちを見ている。


すると、隣のおじさんが赤い顔でゴホンと咳をひとつした。
イヤな予感しかしない。



…え、まさか。

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