煩悩ラプソディ
第10章 星に願いを/AN
カードに雫がパタパタと落ちる。
声にならない声も、抑えることができなくて。
とめどなく溢れてくる涙を拭うことなく、滲んだ文字をただただ見つめる。
誕生日…
あの日…
俺、誕生日だったっけ…
日付け変わって…
だからあんな夜中に…?
ふと、帰り際の場面が蘇る。
公園の出口で、にのはポケットにずっと手を入れたまま俺の話を聞いてくれてた。
寒そうに、肩を竦めて。
柔らかく、微笑んで。
あの日…渡してくれるはずだったんだよね?
にのの…その手で。
カードを見つめる視界がまた霞んでくる。
目を閉じると、別れ際に横断歩道で最後に見せたあの笑顔が浮かんできて。