例えばこんな日常
第12章 まさかの大誤算/AN
きゅっと包むように握れば、ふふっと隣から漏れてくる笑い声。
さっきまでのむず痒さから一転して、自然な感じで手を握れていることに多少の驚きを感じつつ、そのまま小さな手を握っていると。
「…ね、こうしてみよ?」
にのが手を外すように動かすから力を緩めれば、覆った俺の右手に丸っこい指が絡められて。
その指にきゅっと力が込められ、日焼けした俺の手の甲に真っ白な可愛らしい指が映える。
言わば"恋人つなぎ"になり、にのが見上げてふふっと笑った。
…あ。
少し恥ずかしそうなその顔に、心臓がきゅんと鳴った気がして。
「っ、にの!今、きゅんとした!ほらっ、」
それを共有したくて握った手を自分の左胸に持っていき、無理やりそこに押し付ける。
「っ、あ…ほんとだ、」
「ね?うわ~俺きゅんとしたわ今、」
にのの笑顔にきゅんと出来たことが嬉しくて、満面の笑みで笑いかけると。
「…あ、待って。俺も、」
そう言うと、今度はにのが俺の手を自分の左胸に持っていく。
触れた場所からは、確かにどくんどくんと早くなっているにのの鼓動が伝わって。
ふふっとお互い笑い合い、我ながらバカなことしてんなぁなんて客観的に思うけど。
にのも俺にきゅんとしてくれたのが嬉しくて、なんだかよく分からない感覚になってくる。
「ねぇ、もうちょっと確かめていい?」
「ん?」
もっとにのできゅんとできるんじゃないか、という好奇心にも似た感情が生まれ。
「ちょっとこっちきてさ、」
ソファの上ににのを上がらせて、その小さな体を後ろからぎゅうっと抱き締めた。
「っ!ちょ、え?」
小さく驚きの声を出したけど、そのまま離さずにいるとおとなしく抱き締められたままで。
華奢な肩はすっぽりと俺の腕に収まり、前に投げ出した脚でにのの体ごと包み込んだ。
すぐ傍にある耳たぶは案の定赤く染まっている。
にのの体は華奢だけど思いの外柔らかくて、それも相まってまたきゅんと心臓に響いて。
「あ、また俺どきどきしてる。わかる?ほら、」
ぎゅっと抱き締めた耳元で訊ねると、肩を縮こませてこくんと頭を縦に振るにの。
「…俺もしてるよ、ほら」
ぼそっと呟くにのが、抱き締めていた俺の腕に手をかけて肩から胸元へ移動させた。