例えばこんな日常
第19章 ピンクのカウボーイ/AN
先に風呂から上がって脱衣所でわしゃわしゃと体を拭いていると、少しして浴室から湯気を纏って出てきたにの。
もちろんこの後はベッドで仲良しタイム。
ふぅ〜なんて息を吐きながら適当に体を拭くにのを眺めつつ、ふとあることを思いついた。
「ねぇ、ちょっと待ってて」
「ん?」
頭を拭いているにのが顔を上げるより先に、短くそう言い残して脱衣所を出る。
くふふ…あれ着せよっと。
数十秒でにのの元へ戻れば、ちょうど下着を履こうと片脚を上げていて。
「あ、ちょっとタンマ!はい、これ」
「え?」
「これだけ着て」
ずいっと手渡したのは、こないだ買い取った衣装。
にののサイズよりかなり大きめの、だぼっとした薄いピンクのパーカー。
「…なに急に」
「いいからこれだけ着て。下履くなよ」
「は?」
「ほら」
「っ、ちょっ…」
渋るにのの頭に強引にパーカーを被せ、すぽっと首を抜いて袖を通させる。
わたわたしてるにのはお構いなしで、現れた想像通りのその姿に思わず頰が緩んだ。
広めの襟周りからチラリと顔を見せる鎖骨。
余りまくった袖からぴょこっと覗く可愛い指先。
大きくて長めの裾から伸びる細くて真っ白な脚。
そして湯上りのにのは、そのパーカーと同じピンク色に頰を染めていて。
「…完全にヤラしいのよ顔が」
「んふふ、行こ」
緩む頰をそのままににのの腕を引くと、ペタペタ足音を立てながら黙って寝室へついてきた。