
例えばこんな日常
第22章 罪深きボルテージ/AN
消灯時間もとっくに過ぎた真っ暗な部屋。
布団を頭まで被って漏れる吐息を何とか押し殺す。
毎晩の日課になってしまった自慰行為。
それもこれも…全部あの人のせい。
「っ…はぁっ、」
ぎゅっと瞑った瞼の裏に映るのは、目尻に皺の寄った優しいあの笑顔。
そして引き締まった腕と男らしい大きな手。
それなのにやけに優しく触れてくる指先。
"二宮さん?どうしました?"
って俺を呼ぶ柔らかな声も全部…
「んっ…はっ、あいばさ…」
もう…
完全に俺は…
出口を求めて一気に熱が込み上げてきた時、聞こえてきた足音。
そして静かに開いたスライドドアの気配に思わず肩を揺らす。
四人部屋から急に個室へ移動になったのはつい一昨日のこと。
他の入院患者の都合だって説明されたけど、ほんとのところは分からない。
でもそんなことどうだっていいんだ。
「…二宮さん?」
カーテン越しに静かに聞こえてきたのは、思った通りの柔らかな声。
「ふふっ…また一人でシてんの?」
近付いた声と共に布団をそっと捲られ、丸まった体のままその声の方へ振り向いた。
暗闇の中に浮かぶ二つの瞳は、昼間見せる優しさは半減していて。
代わりに、蕩けてしまいそうに熱い眼差しを送られて一気に体が熱くなる。
パチっとヘッドライトが灯されれば、蛍光灯の白い光が眩しくて反射的に目を瞑った。
次に目を開けると、至近距離に整った相葉さんの顔があって思わず喉がひゅっと鳴って。
「…お待たせ」
肘をついてギシっと沈んだ耳の横、その口元がニコッと弧を描く。
「…エッチなことしよっか」
そういつものセリフを囁かれた途端、体の奥からうねるように熱が込み上げてきた。
