
例えばこんな日常
第22章 罪深きボルテージ/AN
「ねぇ今日はさ…もっとイイコトしない?」
「…え?」
意味深なセリフを残し、ベッド脇の棚からティッシュを取って右手を拭き取る後ろ姿。
その様子をただ眺めていると、白い制服の背中がゆっくりとこちらに振り向いて。
「もっと気持ち良くなること…教えてあげよっか」
近付いてきた艶のある黒髪が揺れて、見たことないような男っぽい目に見つめられた。
その瞬間、さっきの言葉の意味がすべて分かった。
今まではお遊びみたいな抜き合いっこしかしたことなくて。
ただ相葉さんは俺の反応を楽しんでるだけで、そこにはそれ以上の意味はないんだって。
散々遊ばれても相葉さんが喜んでくれてるならそれでいいって思ってたんだ。
その先なんて望めるはずないって、そう思ってたから。
でも…
"もっと気持ち良くなること"
それって…
ギシッとベッドが揺れて体が沈む。
ドクドクと高鳴る心臓の音が相葉さんに聞こえてしまったのか、俺の顔を見ると右の口角を上げてふふっと笑った。
「緊張しなくていいよ…?ちゃんと悦くしてあげるから」
「っ…あの、」
「うん?」
覗き込まれた目は熱っぽく俺を捉え、思わず言葉に詰まってしまって。
どうしよう…
すごく嬉しいのに…
ちゃんとできるか全然自信ないっ…
「ねぇなに考えてんの?…あ、怖くなっちゃった?」
「っ、いや…あの…」
「大丈夫だって。二宮さんはなんにもしなくていいから」
そう言ってゆっくりと頭を撫でられて。
「…クセになるくらい気持ち良くしてあげる」
ふっと和らいだ顔が傾き、滑ってきた手が頰に添えられて塞ぎ込むように唇が重ねられた。
