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例えばこんな日常

第23章 absolute obedience/OM






机に突っ伏したまま、お経のような呪文のような教師の声を頭の片隅に置いて。


今日もまたおんなじ一日が始まる。


そもそも高校なんてどこでも良かった。


というより選ぶ必要もなかったっつーか。


勉強なんか真面目にしなくたって、いくらやんちゃしたって。


全部じいちゃんが何とかしてくれる。


今までもずっとそうやって生きてきた。


俺のことを溺愛してるじいちゃん。


だから俺はじいちゃん孝行のつもりでこの高校に入ってやったんだ。


窓際の一番後ろの俺の席。


一年の時からここが俺の特等席。


俺に逆らうヤツなんてこの学校には誰一人いないから。


こうして毎日朝から眠り呆けてても、授業をサボって中庭に居ても怒られたことなんか一度もない。


言うならばここは俺の城。


それに、最近面白いモノも手に入れた。



開け放った窓から聞こえてくるグラウンドの声。


耳障りな喧騒の中、ある名前が聞こえてうつ伏せた頭をゆっくり持ち上げる。


サッカーの授業らしきその面々に、無邪気に笑いながらボールを追い掛ける姿を捉えて。


やんちゃそうな見た目の割に、笑うと途端に幼さが前面に出る。


周りには意気がる癖に、中身はまるで無垢。


面白いほど俺に従順なアイツ。



「あれ?大野起きてる。珍しっ」


前から聞こえた声に目をやれば、プリントを片手に半身振り返る男。


生徒会長のこの櫻井は、クラスで唯一俺に口を聞けるヤツで。


めんどくさい教師とのやり取りも代わってやってくれたりするから助かってんだ。


だからじいちゃんに頼んでこいつと三年間同じクラスにしてもらったし。



「何見てんの?あれ一年?」

「んー」

「あ、あいつってさ、確か大野の…」


頬杖をついて眺める俺に、櫻井が窓の外を指差す。


ゴールを決めたのか、クラスメイトとハイタッチをして満面の笑みを浮かべるアイツ。


「…そ。俺の舎弟」


俺の大事なおもちゃ。


なぁ、今日は何して遊ぶ?

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