例えばこんな日常
第23章 absolute obedience/OM
「大野さんっ!」
息を切らしてやってきたソイツは、目の前に来るなり勢い良く頭を下げた。
「すいません遅れてっ!あのっ、担任から頼まれて…」
「あ〜いいいい、大丈夫。それよりさ、考えてきた?例の」
「あっ…」
木陰の下の芝生に寝転ぶ俺の傍ら。
正座をした松潤が俺の問いに分かりやすく口を噤んで。
「っ…えっと、いや〜…」
そして長髪の頭をガシガシ掻きながら、明らかに動揺した顔。
ふふ、目もオロオロ泳いじまってんじゃん。
「…まさかなんも考えてきてねぇの?」
「っ!いやっ、その…」
ワザと眉間に皺を寄せて呟けば、更にうろたえてソワソワする松潤。
ほんとおもしれぇな、コイツ。
「何して遊びたいか考えてこいっつったじゃねーか」
「いやあのそれは、」
「ぁんだよつまんねぇな。じゃ今日はもう帰るか」
「あっ、いやちょっと!待って…ください…」
起き上がって立とうとした腕を咄嗟に掴まれ、くっきりした大きな目に見つめられる。
つい先日、コイツの俺への気持ちを知ってしまった。
こんな見た目でギラギラしてんのに、俺の舎弟になることに何の抵抗もなかったコイツ。
最初は変わりもんだなぐらいしか思ってなかったけど、ついこの間その理由が分かったんだ。
やけに従順なコイツは、どうやら俺のことを本気で好きらしい。
男に興味はないけど、俺がちょっかいを出す度にいちいちコイツのリアクションが面白いから。
最近はコイツに「俺と何がしたいか」を決めさせんのがマイブーム。
それがまぁおもしれぇんだ。
だってどんどんエスカレートしてくんだもん。
「なんだよ、言ってみろ」
「っ…えっと…今日も…」
「うん?」
「今日も、大野さんと…
キ…キス、したいです…」
真っ赤な顔で、だけど睨むような耐えるような眼差しでそう告げられて。
思わず頰が緩む。
「ふふっ、また?好きだねぇお前」
「っ、あ…やっぱ他のに、」
「ううん、いいよキスで」
笑ってそう言うと、更に顔を赤くして掴んでいた腕が離された。