例えばこんな日常
第24章 動機不純100%/AN
その日はいつになく寝付きが悪かった。
それもこれも、今日のピンでの仕事がイマイチ手応えに欠けていたからか。
それとも、今朝出掛ける間際に見た今日の運勢が中途半端な9位だったからか。
ごろごろと身動きつつベッドサイドのスマホに手を伸ばせば、煌々と灯る画面には『4:44』の数字。
うわっ…最悪…
パタリと画面を伏せて見なかったことにする。
悪いことは重なるもんだよ。
これ以上起きてたら負のスパイラルに巻き込まれてぐるぐると考え込んでしまいそうで。
はーっと思いっきり息を吐いて無理矢理に目を瞑った。
…でも俺は忘れてたんだ。
悪いことは寝ていても起こるんだってことを。
目の前には裸の女の人が居て。
いや居るっていうかこれ完全に組み敷いてんな。
あぁ夢かってやけに落ち着いてるのも夢ならではって感じで。
俺ってば相当溜まってんのかなー…
なんて思いながら目の前の女の人と肌を合わせていた。
夢の中でもセックスはセックス。
普通に気持ち良くて、ただひたすら夢中で味わっていたんだけど。
ずっと違和感があった。
だってこの人誰なの?
いや、知ってる人だとそれはそれでまずいんだけどさ。
顔を見たくてもどうしても視界が上に行かなくて。
そうこうしてる内に夢の中でも絶頂は訪れる。
出口を求めてがむしゃらに腰を送り続けていたら、ふいにその人から名前を呼ばれた。
「相葉さん…」
その声が聞こえたと同時に、それまで全く動かなかった視界が動いてピントが合って。
そこに現れたヤツに、心底度肝を抜かれた。
えっ!にのっ…!?
俺に組み敷かれた状態のにのが、さぞ気持ち良さそうに顔を歪めている。
しかも体は完全に女なのに、顔だけバッチリいつものにの。
なに!?
なんだこれ!
夢って分かってんのに、あまりにあり得ない状況にパニックに陥って。
なのに目の前のコイツは。
「相葉さんっ…きもちいっ…」
なんて、眉間に皺を寄せたうるうるした目で言い放ち。
「あっ、だめ…イクっ…!」
ぎゅっと目を閉じたかと思えば、俺にしがみつくように腕を伸ばしてきて。
首元に纏わる腕の感触がやけにリアルに残ったまま、達したにのをただ抱き締めるしかなかった。