例えばこんな日常
第26章 Love truly!/AN
またふふっとマスクの中で笑った時、目の前のガラス窓にいきなり人影が現れた。
ぶんぶんと思いっ切り手を振るその人は紛れもなくまーくんで。
しかも変装も何もしてないナチュラルな相葉雅紀がにこにこしている。
…っ!?
そうこうしている内に軽い入店音と共に駆け寄ってきたまーくんは。
「かずごめん!待った?」
って全力のキラキラ笑顔で俺の肩を叩いて。
「っ、もうっ…!」
「えっ?なに?」
咄嗟にまーくんの手を取り自動ドア目掛けて走る。
女の子たちの悲鳴みたいな黄色い声を背に、すぐ後ろの「え、なになに?」って焦るまーくんを引っ張って街を駆け抜けて。
煌びやかなイルミネーションと人混みの中を擦り抜けながら、段々と重くなっていく足取り。
ついにはまーくんに並ばれ今度は俺が引っ張られて。
ていうか…どこまで走るつもり!?
「はぁっ、待って、まーく…」
「えっ」
息も絶え絶えそう絞り出すと、走っていた足が急に立ち止り。
「わっ!」
どんっと背中にぶつかった体はすぐ振り返ったまーくんに抱き留められた。
「…大丈夫?」
息一つ上がっていない至近距離の整った顔。
くるんと丸い瞳と、少しおどけたように結ぶ口元。
もうっ…
「っ、なんでそのまんまなのっ」
「ん?」
「格好!ダメじゃん、バレちゃうからっ…」
「あっ!」
まーくんの目を見ながらそう言えば、しまった!って顔を作ってるけど。
絶対わざとだよね?
「もう!何してんの!」
「くふふっ、やっぱバレちゃうかな」
「バレるに決まってんじゃん!笑い事じゃないんだよ!」
「も~そんな怒んないでよ二宮先輩」
結構真剣に言ってんのに目の前のまーくんはおちゃらけたまま。
「けど怒ってる顔も可愛いね」
「っ…うるさいっ!」
そのまま頭を撫でられて恥ずかしさと悔しさで顔が火照っていくのが分かる。
こっちの世界に入ってまだ間もないまーくんはプロ意識に欠けるところがたまにあって。
翔さんの言った通りまーくんと潤くんはダイヤの原石だった。
そして、今となっては磨きに磨かれたおかげで二人とも簡単に街なんか歩けないんだよ。
それ分かってんの?
もういいもん…
翔さんに言いつけてやるから。