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例えばこんな日常

第26章 Love truly!/AN






「くふふ、ごめん。怒った?」

「…怒ってない」

「あ、怒ってる」

「怒ってません」

「嘘だ、怒ってる」

「っ、じゃあ怒ってる!怒ってるよ!」


しつこいくらい聞いてくるまーくんに苛立ちが募って思わず大きな声を出した瞬間。


ぎゅうっと抱き寄せられて。


ふかふかのコートが頬を擽り、力一杯抱き締められた体はぴったりまーくんと密着してる。


街中から外れた住宅街の一角。


幸い人気もないこの空間に、ただただドクドクと高鳴る心音が響き渡るようで。


「ま…」

「ダメ、怒んないで」


耳に届く穏やかな声。


「だって…今日俺誕生日だよ?」


笑い声が聞こえてきそうな弾んだその声に、またどきんと胸が高鳴って。


「…かずは何をくれるの?」


言いながらそっと腕を離した間近の顔は、文句も言いようのないカッコ良さ。


どきどきと波打つ心臓を感じつつ、ふいに伸びてきた手に肩を揺らせば。


鼻まで覆っていたマスクをくいっと下げられ、深く被っていたキャップの鍔も上に押し上げられて。


「はい、ちょうだい」


そう言うと少し顔を屈めて目を瞑り、んっと唇を突き出してきた。


もう…
バッカじゃないの。


ゆっくりと近付いてちゅっと唇を押し当てれば、途端に緩まっていく頬が視界に入り。


そして、くふふっと笑い声が漏れたかと思ったらまたぎゅうっと抱き締められて。


「ありがと。はー俺って幸せ!」


なんて、ぎゅうぎゅうに抱き締めながら言っちゃってるけど。


そんなの俺だって。


「まーくん、お誕生日おめでと」

「うん!」

「ねぇ…」

「うん?」

「…まーくん大好き」


今度は俺がぎゅうっとしがみついて。


顔を上げたらそっと目を瞑った。


「…なに、かずも欲しいの?」


すぐ傍でくふふって笑う声にそのままこくんと頷けば。


「俺も…大好きだよ」


目を瞑っていても分かる笑顔と一緒に、想いにも似た優しい感触がそっと降ってきた。





end

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