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例えばこんな日常

第28章 ピンクの酔いどれカウボーイ/AN






にのからのLINEが来たのはちょうど一時間ほど前。


"今から帰るねー"


『帰るねー』って。


いつもなら『今から帰る』ってだけのただの連絡事項なのに。


『ね』がついてしかも語尾が伸ばされてるし。


ふむふむ…なるほどね。


そのいつもの短い文章の中から俺なりに考察してみた。


…今日のにのはめちゃくちゃ機嫌が良いらしい。


珍しく飲み会に誘われて丸まった背中で出掛けて行ったけど。


にのは元々社交的なほうだから行ったら行ったでそれなりには楽しめるんだもん。


だいぶ飲んでんだろうな、この感じじゃ。


ふふ…やべーちょー楽しみー。


酔っぱらった時のにのってマジで可愛いんだよね。


無防備っつーかガードが甘くなるっつーか。


無意識に見せる仕草とか堪んないの。


そろそろ帰ってくるかな…


そう思ってたら微かに聞こえた玄関扉を開く音。


それからすぐにぺたぺたとした足音が近付いてきて、リビングのドアに耳を傾けた。


「ただいまー」

「お、おかえり」


ガチャとドアを開けて入ってきたにのにソファから振り返る。


…うっわ、思ったよりヤバい。


見るからに酔っぱらってますって感じで目元を赤らめてて。


おまけに色白の首筋も真っ赤に染まってる。


「なにしてた?相葉さん」

「んー?テレビ観てた」

「ふーん」


なんて短い返事からもその機嫌の良さが読み取れるくらい。


キッチンに入って冷蔵庫から水を取るその背中に呼び掛ける。


「相当楽しかったんだ、今日」

「え?なにが?」

「いや、結構飲んでんじゃん」

「んー?そうでもないけどぉ」


こてんと首を傾けてペットボトルに口をつける仕草。


なにそれ、可愛すぎだろ!


つーかそうでもなくないんだって、お前相当飲んでるから。


こっちは大歓迎だけど。


いやちょっとヤバいな。


今日のにのはヤバいな、久々に。


ぐびぐびと水を半分くらい飲んでぷはっと口を離し。


ぎゅっと目を瞑って軽く頭を振る仕草なんかも普段やんないだろそれ。


にのの動き一つ一つに目を奪われてしまう。


一刻も早く可愛がりたい…!


そんな衝動に駆られて誘われるようにキッチンへと足を進めた。

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