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にじいろ。

第27章 背徳の瞳。

“それで虹の家に来た”

雅紀「ごめん… もういいからっ…!」


気付いたらヒカルを抱きしめてた。
ごめん
ごめんな、ヒカル…
辛いこと言わせた
思い出させた…

ヒカルが抱きしめる俺の腕をポンポンと叩く。

雅紀「うん…?」

“大丈夫。
だから聞いてほしい”


雅紀「ヒカル…」


ヒカルはもう一度ペンを取った。


“交通事故”


え…?


“ぼくも車に乗ってた”



も、いいから…



“目が覚めたら病院にいた”

“声が出なくなってた”



それから
色々検査をされて
脳にも発声器官にも問題は無いと分かって
心因性の失声症と診断されたらしい。

精神科や心療内科にも通った。
言語聴覚士とのマンツーマンで行うリハビリでは
意思疎通をスムーズに行う為に手話を覚えた。


学校にはあまり行っていない。
喋れないから聞こえていないと勘違いして陰口を叩かれたり
からかわれたり
喋れない演技をしてると言われたりした。

言葉で反抗してこないから
イジメの標的として恰好のネタだったと…


そして
声を閉ざした分
それまで見えなかったモノが不思議と見えるようになった。

ヒカルはそれを絵に描いた。


『絵を描いていると
嫌なことも辛いことも全部忘れられた』
そう言って
天使のように笑った。

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