テキストサイズ

0時の鐘が鳴る前に

第1章 菜津子の部屋

「あ、あなたの演技も最高でした!」

「広末 浩太」

「…え?」

「あなたじゃなくて。俺の名前」

そう言って、彼は席を立つ。ふわふわの茶色い髪の毛が西日に照らされて綺麗だ。

「修羅場になんないように、早く本気の彼氏作れよ」

柔らかな笑みを浮かべてカフェから出ていく広末さんの背中に見惚れながら、私はそっと息をついた。

…なんて良いひとなの!

こんな状況に巻き込まれたら、絶対面倒臭いのに。

明日の鈴木くんの予約は申し訳ないけど断ろう…なんて思いながら、

カフェを後にして日の沈む街を軽い足取りで歩いた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ